2025.4.08市と議会は市民のための政治を

先月末、郷ノ浦町のへき地保育所の柳田と志原が閉所式を終え、これで同町のへき地保育所5園はすべてなくなった。今回の柳田保育所の閉所については、いまだ地域や保護者の一部は複雑な心境のようだ。昨年までの数回にわたる閉所に向けた説明会で、市と地域や保護者の意見や考え方の相違を目の当たりにしてみれば、当然と言えば当然なのだろうが。

 過去の説明会で市や市長は「人口減少により閉所はやむを得ない」などの旨の説明をした。そして今回、閉所式のあいさつでも篠原市長は人口減少による問題をあげ「市はこの状況に対応せねばならない。今回の閉所はその流れの一つ」と述べている。要するに人口減少ゆえの閉所であり、それに伴う財政面などを理由に理解してもらうよう市民に求めているのだ。

 人口減少による市の財政の圧迫は、何も本市に限ったことではない。全国の地方自治体は同様の課題を抱え、行政の効率化と無駄を省いていく削減化を図っているのが現状だ。このことは、柳田地区の住民や保護者も十分に承知しているはずだ。また、地域に限らず多くの市民も理解しているものと思う。

 しかし、少子化や財源、行政の効率化を言うのであれば、他にも手を加えねばならない施策や施設、島外に流れ出る予算や経費などの削減が山ほどあるのではないかと思う。市民の声でよくあるのが「市はさまざまな施策をしているようだが、自分らには何の恩恵も感じられない。市民の収入は減る一方だが、公務員や議員などは私たちと比べて高給取り。希望が見えない」。市民間で一度は耳にしたり、話題にしている意見ではなかろうか。

 人口減少の課題に向かい合うため、市は今期総合計画で「2050年に人口2万人」を掲げる。この目標に異論はないが、そう簡単に達成できるものではないこともわかる。特にここ数年、人口減少は著しく加速してきている。本当に目標人口を維持できるのか。

 人口増のため、市はUIターン推進の考えをあげ、さまざまな施策を試みる。では、一つ問いたい。ずっと本市に住んでいる住民が、この先もずっと住んでもらえるようにするための効果的施策は何があるのか。確かにIターン者は「すばらしい島」と本市を気に入ってはもらえるが、ずっと本市に住む住民から聞く「希望がない」と言う絶望感は、どこから湧き出る気持ちなのか、市は分析してみたことはあるか。

 今回のへき地保育所閉所の件は、一部の市民にとっては明らかに絶望感を与えた。市は一切の方針を変えることなく、閉所に突き進んだ。それを判断する市議会も、市の提案を賛成するだけの追認機関に成り下がってはいないか。

 市も市議会も、市民のための政治をしたいとは思わないのだろうか。特に市議会は2月会議で「市民の声を聞く」を理由に定数削減案を否決したではないか。市民に「希望がない」と言わせることは、政治家としての絶望だと思うが。