2019.7.02子ども達のことを第一に考えて対応を
市長の行政報告にある、芦辺中新校舎建設の遅れの記事に対し、当紙読者や島外の建設関係に携わる人など、複数から「8月末完成というが、今から残り2か月で完成は可能なのか。これから梅雨の大雨などを想定すれば、とても間に合うとは思えないのだが」と意見が寄せられた。
前号で記したように、芦辺中新校舎建設は建設用地選定から保護者や地域住民を巻き込む議論が起こり、用地選定のギリギリの段階まで市教育委員会は芦辺ふれあい広場周辺を建設地として主張していた。しかし、その後に県から公表された資料で、土砂災害危険及び警戒区域の指定がされていたことが発覚し、子ども達の安全と適正な教育環境の場所にするため、現在の旧那賀中に変更する事態となった。
この時、市教委は県公表の土砂災害警戒区域等の指定は知っていたはずだが、結果的には市民からの指摘により、市教委の公表は後出しになった。初動の説明不足が露呈した形だ。
また、小中学校普通教室エアコン設置の考えも同様だ。全国的に猛暑による健康と命の危険が叫ばれる中、教育長は平成29年市議会9月会議で「子ども達の体と心を鍛えて、その先に頭が鍛えられてくるというのが私の教育の信念。学校にエアコンを付けると、地球温暖化にはますます拍車をかけることにもなる。各校の先生方も同じ気持ちだ」として、エアコン設置を否定していた。
しかし昨年の市議会9月会議ではその考えを反転し、設置に向けて舵を切った。ただ、2年以上前から猛暑による熱中症被害は全国的に急増し、早急な対応と判断は必要とされていた。この時の判断の遅れとその後の鈍い動きが、エアコン設置完了予定のずれ込みになっていったと言えない
だろうか。
さらに、昨年5月に湯本地区公民館敷地内にある石碑が倒れ、小学2年の男児が下敷きになり緊急搬送される事故が起きた。公民館管理は市教委の管轄になる。「市公民館条例」第7条に「公民館の管理は壱岐市教育委員会に委任する」と記載されている。しかし、事故後の原因や状況説明、さらには管理責任についての謝罪は公の場で行われていない。特にこの件は、直接命に関わる問題であり、説明責任を果たしていないのは、無責任と言われても仕方がないのではないか。
そして、芦辺中新校舎建設になる。詳細は前号に掲載しているが、当初の完成予定は今年3月末であり、教育長は「新入生の入学式は新校舎で」と市議会で発言していた。ところが当紙の調べで工事の遅れがわかり、今年2月8日発行(338号)で状況を市教委に問うた記事を掲載した。その後、市教委は市議会3月会議で完成は7月末とし、繰越明許の承認を得た。ようやく完成のめどが見えたかと思いきや、今月の市議会で、さらに工期延長として8月末完成予定と延長を願い出た。
工期延期についても、豪雨被害の復旧工事による現場作業の人員不足としか伝えられていない。しかし、幾度にも渡る工期延長の明確な理由説明を公の場ですべきではないのか。その中で謝罪すべきは謝罪し、保護者らへ理解を求める場を設けるべきだ。
芦辺中新校舎には、今回のエアコン設置も含まれる。旧田河中校舎からの移転だから当然だ。このままの工期であれば、芦辺中生徒のみが、夏の猛暑に対して我慢を強いられる事態となる。市内中学校の不平等となるのではないか。
冒頭にある様々な案件の一連の流れを見て、何が足りないのかと考えれば、市教委による市民に理解を求める説明や謝罪の怠りに思える。きちんと筋を通すことをすれば、誰も憤りは感じない。たとえ感じても言葉にはしにくい。
厳しいことを言うが、子ども達に関わることであり、影響を受けるのは全て子ども達だ。だからこそ、きちんとした対応を求めている。再々延期はないとは思うが、もしも今後、芦辺中新校舎建設に再度遅れが起きた場合、今度こそは常識のある当たり前の対応を求む。学校や教育現場は子ども達が主であり、市教委など行政は従であるべきだ。(大野英治)