2023.8.29制度維持より子どもを守る結論を

 今年3月、離島留学制度を活用し本市に在住していた壱岐高生の死を発端に、県の離島留学制度の運用と課題を検討する「これからの離島留学検討委員会」が4月と7月に開かれ、最終的に制度の改善策などをまとめる同委員会が今月末に行われる予定だ。

 同委員会は計3回を予定し、今月末の第3回委員会が結論の場となる。ちなみに、第2回委員会はマスコミや一般に対して非公開だった。里親などを招致し関係者への聞き取りが行われたと推測され、個人情報への配慮のためと思われる。非公開を経た第3回委員会は最終結論の場、どのような方針となるのか注視すべきだ。

 6月28日、同委員会と連動する形で音嶋正吾、山口欽秀、武原由里子の3市議は、白川博一市長、山口千樹教育長、そして大石賢吾知事、県教育委員会に対し「3月に発生した死亡事案と同制度の現状について、市民の中から行政の対応への不満や不安の声がさまざまに上がっている」として、壱岐高生の死亡事案への対処と離島留学制度改善への要望書を提出した。

 要望には「県による同委員会の検討内容について、これまで正式な情報提供がまったくなく市民からは疑問や不安の声が出ている」という。その上で、同委員会の検討内容に盛り込むことを強く訴え、8項目の要望を提出した。以下がその内容だ。

①危機管理や安全管理体制ができていない現状のまま離島留学が継続されていることは異常事態。問題発生時のフローチャートが整備されるまで事業を中断すること。

②離島留学生の里親の条件・受け入れ人数の再検討、里親の体制が整うまでは、子どもの受け入れを中断すること。

③国土交通省の離島活性化事業として「離島に人が訪れること」を主にし、子どもの教育や療育が図れていない。「こども基本法」を遵守すること。

④子どもの最善の利益を守るため、子どもが安心して意見表明できる環境を整備すること。

⑤地域住民との交流の場や里親相談会や研修会等を実施すること。

⑥県と市の連携・各専門家によるネットワークを構築し、子どもの命や人権が守られているか、専門家の目で定期的にチェックすること。

⑦死亡事案について第三者委員会による十分な検証と、当制度の責務を有する県や市から真摯な謝罪を記者会見などの形で表明し、行政と市民が参加する慰霊の機会を設けること。

⑧実親と県知事との対話会の開催を希望。

 この中で、特に思うのが「里親の受け入れ人数の取り決め」「死亡事案の検証と環境が整うまで制度の一時中断」「国交省による人口増のための制度の考えから、子どもの教育のための制度へ」などの指摘は同感だ。

 今月末、離島留学検討委員会で県の考えが公表となる。どのような方針と改善策を示すのか。そして、その結論を受け、市では9月以降から小中学生対象の「いきっこ留学制度」の検証が始まる。きちんと子どもと向き合い、子どもを守る結論になるのか、それとも制度継続を主とし、制度を守るための結論になるのか、結果を待つ。