2024.6.17今後も早期の公約実現に期待

 市議会定例会6月会議の補正予算で、篠原一生市長の公約の一つが議案に上がった。高齢者、後期高齢者を対象とした入湯券の助成として649万6千円の追加予算が上程されている。「これまでの入湯券6枚が12枚に倍増する」とは言っても、もともと12枚の入湯券が財政健全化政策のために6枚に減らされていたものであり、この場合は復活と行った方が正しい。

 篠原市長も入湯券については、市長選以前から市民の声を耳にしていたとのことで、主な10の選挙公約に「入湯優待券の復活!いつまでも自分らしく健康でいるため、現在の倍の入湯優待券に!」と掲げていた。今回の追加補正案は、一つの公約実現と言えよう。

 また、当紙4月19日発行号の篠原新市長に質問の記事で、「100の公約を掲げた。まず手をつけていく公約とは」の質問に対し、篠原市長は「難易度に違いがあり、すべて市長就任直後からスタートというわけにはいかないが、すぐにできる公約では入湯優待券を現在の倍に復活など。最も優先すべきは市役所内部の見直し。役所は市政のエンジンのような役割なので、必要な部分は積極的に進める」と答えている。有言実行として評価したい。

 ただ、篠原市長自身が言うように、入湯券の復活は数ある公約の中で難易度は低い。かかる予算も多額ではないため、市長の考え方一つですぐにでも実現できる公約だった。しかし、難易度が低い施策でありながら、これまでの高齢者の福祉に不満を募らせていたことも事実だ。

 以前、入湯券の半減に至った経緯は次の通りだ。2020年市議会6月会議の行政報告で白川博一前市長は「自主財源に乏しく、財源の大半を地方交付税等に依存している本市は、今後さらに厳しい財政運営となることが予想される。時代の変化に柔軟に対応し、将来に過度の負担を残さないよう、優先順位を意識した効果的な事業の『選択と集中』を行っていく必要がある」と明かした。

 2021年1月、市中期財政計画を公表、財政調整基金が枯渇する見通しがわかった。財政健全化のため、市は「財政立て直し元年」を掲げ、補助金などの見直しに着手、その中の一つに入湯券の半減があった。市民から「高齢者いじめ」などと揶揄され、不評を受けながらも補助金削減を断行した-大まかだが以上のような経緯だった。

 今にして振り返っても、なぜ高齢者の楽しみの一つとなる福祉関連を削減したのか。後にわかることだったが、市の施設運営関連や、市民生活に直結していたとは思えない島外関連の施策など、他に削減すべき予算は多々あった。しかし、結果的に市民や高齢者など、島を支えてきた人たちが我慢を強いられる結果となった。

 篠原市長は100の公約実現が自らすべき仕事だという。任期4年で100の実現は容易ではない。市民対話会の実現など、中には今回と同様に難易度が低い公約もあれば、各町の整備など市長就任前から進行中だった公約もある。ふるさと納税寄付額30億円達成などは、難易度が高いが達成すれば本市の活性化へ多大につながる。ただ、一つだけ言いたいことは「常に市民目線を忘れずに」。初心忘るるべからずの気持ちで進めてもらいたい。