2024.9.10「住民の理解」は基本的なルール

 現在、本市ではへき地保育所閉所の問題が大きな議論を呼んでいる。

 市が示した閉所の方針に異を唱えた市民団体が一時存続を求める署名活動や市との交渉を行い、説明の不備を指摘する地域住民の声と合わせ、市への方針見直しを要望。今月の市議会では、へき地保育所の閉所条例議案を提出してきた市に対して、市議会の判断に市民の厳しい監視の目が向けられるなど、状況は混沌としている。

 へき地保育所は市の公共施設に該当し、市が計画的な管理を行うように定められている。施設の状況や将来の見通しを明確にするため、市が所有するすべての公共施設などを対象に、地域の実情に応じて総合的かつ計画的に管理する「公共施設等総合管理計画」を策定している。当然、本市も同計画は2017年に策定し、2022年に改訂するなど、公共施設の方針などの基準にしている。

 公共施設とは、地区公民館や壱岐の島ホール、図書館などの施設、公営住宅など該当施設は多種に及ぶ。子育て支援施設であれば、保育所だけではなく幼稚園や小中学校も対象となる。

 総合管理計画では、公共施設の基本的な方針として「老朽化や機能の不具合が発生した施設は、品質を適正に保つには大規模な改修や更新が必要」「人口減少化の中、公共施設の数量は人口に比較して過多な状況が続くと予想されるため、数量を適正に保つための施策が必要」「改修・更新コストの増加が見込まれるため、コスト(財務)の適正性を保つ施策が必要」など記載されている。

 市は、この計画の方針に沿った形で施設の管理計画を立て、今回問題となるへき地保育所閉所も進めていると考えられる。

 ただ、総合管理計画には別の重要な記載もある。公共施設を統廃合する場合には、住民との合意形成が必要とある。文面には「公共施設の再編には、住民の理解と合意形成が特に重要となる。住民にとっては総論賛成でも、自分が利用している施設の統廃合には難色を示すことが多く、十分な話し合いと時間をかけての合意形成が必要」とある。住民の理解と合意は特に重要だと記されている。

 さらに続けて「事業実施は住民の理解が重要であり、住民の理解を得ながら、住民負担の少ない取り組みから徐々に実施し、無理のない計画の推進を目指す」とまで記載されている。

 すなわち、再編計画、事業の実施のどちらの段階においても「住民の理解が重要」だと明確に示されている。総合管理計画は、市の最上位計画である「第3次壱岐市総合計画」の基本理念「誰一人取り残さない。協働のまちづくり」に基づき策定されたもので、本市が最も重要視し、基準とせねばならない基本中の基本の位置付けだ。

 へき地保育所閉所問題において、総合管理計画にある「住民の理解」は得られているだろうか。「十分な話し合いと時間をかけての合意形成」は成されているだろうか。「住民負担の少ない、無理のない計画の推進」を心がけているのだろうか。

 柳田保育所閉所に関する保護者と地域住民への説明会で、保護者は「地区外への子どもの送迎など、保護者の負担を考えてもらいたい」「約2年前の渡良保育所閉所の時には、柳田と志原は残すと言っていた。保護者を無視した一方的な方針変更だ」と言い、地域住民は「計画段階で地区への説明がなかった。必要だったと思わないのか。その中で検討、協議をしていけば、こういうことはなかった」と言う。

 この状況を見て、市と市長は果たして市の最上位計画「第3次壱岐市総合計画」をきちんと遂行していると言えるのか。はたから見れば市の一方的な押し付けにしか見えない。この事実に市長はどう思うのか問うてみたい。

 市議会は今会議で、へき地保育所の閉所条例を審議、採決せねばならない立場にいる。市民の立場に立った、冷静かつ常識ある採決に期待する。

 繰り返すが、市と市議会自らで策定を決めた市総合計画。決して軽んじてはならない重要な取り決めであり、市の方針の基準になる最上位計画だと言うことを肝に銘じて審議に望んでもらいたい。へき地保育所の閉所云々以前に、基本的なルールを守る市政であらねばならない。市民は今議会に注視している。