2019.6.25429万円の着服横領で逮捕(2年前に起きた九郵従業員の運賃横領事件)

 勤務先の九州郵船株式会社(福岡市博多区、竹永健二郎社長)壱岐支店の旅客船運賃を横領したとして、壱岐署などは17日、業務上横領の疑いで、福岡市中央区平尾、同社の元社員で無職の小畑伸介(44)を逮捕した。逮捕容疑は、2015(平成27)年3月2日から2016(平成28)年12月29日までの約2年間、本市で複数回にわたり、現金合計429万円を着服し、横領したとしている。同容疑者は、2007(平成19)年5月21日から2017(平成29)年2月23日まで、壱岐支店の社員として勤務。売掛金の未収金回収業務に従事していたが、犯行が発覚した後に退職している。

 

 同事件は、2016(平成28)年9月半ばから同社壱岐支店に就任した当時の支店長が、従業員の挙動や言動を不審に思い問い詰めたところ、自ら事実を認めた事で発覚した。前任の支店長が犯行に気がつかなかったことから、被害が拡大した可能性がある。その後、小畑容疑者は退職。同社は顧問弁護士と事実確認を行った後、今年2月に刑事告訴に踏み切り、捜査に及んだ。

 この問題は事件発覚当時から注目を浴び、本紙宛にも市民から告発の投書が相次いだ。

 この流れから、2017(平成29)年5月19日発行(253号)の本紙一面にも取り上げている。当時の投書には「九郵の郷ノ浦従業員が、お客が支払っている運賃を数年に渡り横領した。その額は一億に近いとの噂を聞く。会社自体どんな管理体制をしているのか。横領した事実が発覚してからも九州郵船は公表せず今でも隠蔽している」とあった。さらに、「本土に渡る手段が他にないので今後も九郵の船に乗らざるを得ないが、こういう実態である会社に気持ちよく運賃を払うことが出来ない。市民にとってこの事件は裏切られた気持ちで一杯だ」と憤りを見せた。また、別の市民は「現金のやり取りが行われる場所で、従業員は何をしているのか。会社の危機管理能力が皆無。一生懸命に働いている従業員や乗組員には同情してしまう」と怒りを露わにした。

 その後、再度本紙に投書が届き、今年5月17日発行(351号)に、九郵に対し「犯行から2年が経つが経過報告と説明が為されていない」と厳しい指摘の投書内容を掲載した。

 一方、九郵は「一連の事件を弁護士に相談した。その後に刑事告訴に進むこともあり、事実関係の確認を取るという経過があった事で、公表を控えている。詳細は結審となる時期にはなるが、早急に説明をしたい」との姿勢を貫いている。今のところ、今回の逮捕に至るまで同社からの詳細な説明はない。

 今回の逮捕について九郵は「これまでは捜査に支障をきたすため、公表を控えていた。今後は信頼回復と再発防止に全力で取り組む」と謝罪の弁を述べるにとどめた。

 壱岐署は「捜査は継続し、余罪があるかを調べている」とした。