2019.7.161億4000万円の事業「壱岐島リゾートアイランドプロジェクト」 施設予定地未定のまま計画開始

「宿泊費10万円、富裕層を島内に誘致」リゾート施設の建設地はどこに?

 

 市は、新たな富裕層向けリゾート施設を構築していくとして、壱岐島リゾートアイランドプロジェクトを進めている。この計画は今年の市議会3月会議で、今年度当初予算に盛り込まれ、賛成多数で可決した。計画内容は、島内の穴場的な用地に宿泊施設を建設し、富裕者層の観光客を誘致していくものと、既存の宿泊施設の魅力向上のための施設整備を進めるものの2本柱。現在のところ、施設予定地の公表はなく内容も未確定が多い。また、宿泊費は一泊10万円と高額を設定する。リゾート施設には約1億1500万円もの予算が組まれることから、今後の成り行きに注目すべき計画だ。

 

 壱岐島全体をリゾート地として観光振興を進めていく計画があがっている。その一つとして、市議会3月会議で「壱岐島リゾートアイランドプロジェクト」が決まり、今月から市ホームページで同事業の企画提案の公募を開始した。同事業費は、総予算1億4000万円。島内に富裕層の観光客をターゲットとしたリゾート施設の建設と、既存宿泊施設整備の2本柱だ。

 新たなリゾート施設宿泊費は一泊10万円と、これまで島内宿泊にはなかった高額な価格設定で打ち出す。建設する宿泊施設は、他人に干渉されないプライベート空間を構築することを目指す。コテージタイプの宿泊を4棟、管理棟兼レストランを建設し、高級リゾート施設として島外観光地にある大型宿泊施設とは一線を画す。さらに、経営状況に合わせて、段階的に増棟していくプランを計画している。

 また、同施設は宿泊とは別に島内の宿泊施設事業者が一流のサービスに触れ、ノウハウの習得ができる研修施設としても活用する。これにより、島全体のサービスの品質向上に資することを目指しているようだ。これら事業に予算8500万円を予定している。さらに島外からのアクセス強化や、宿泊、体験、食事などのワンストップ予約システムの構築などのソフト面に、予算3000万円を予定。リゾート宿泊等施設整備に計1億1500万円を計画している。

 また、同施設とは別に、現在島内で経営する既存の宿泊施設整備にも魅力向上補助金で、2500万円の予算を投入する。宿泊施設の設備向上のため、内外装や風呂、トイレなどの水回り、Wi-Fi環境やキャッシュレス対応などのレベルアップを支援する。補助率は2分の1で1件あたり500万円。現在、8件の既存宿泊施設が確定している。

 以上の計画の総予算が1億4000万円だ。予算の内訳は、同施設や既存施設整備費などの計画に地方創生推進交付金が活用され、国費で7000万円、地方債3820万円、一般財源3180万円。国費で2分の1がまかなわれる。

 市は「宿泊施設は最盛期から半減し、施設の老朽化や後継者不足など、今後もさらなる宿泊施設の減少が懸念されている。これ以上の観光インフラの弱体化は観光誘致やイベント誘致など、交流人口拡大施策に支障をきたすことになる。

 同交付金という有利な財源が活用できる今、課題を解決するための観光インフラの強化に取り組みたい」と説明する。

 

既存の宿泊施設との競合は大丈夫か

 市議会3月会議の予算特別委員会で、植村圭司議員が壱岐島リゾートアイランドプロジェクトについての詳細を問う質疑を行なっていた。この時の質疑で、植村議員は「新リゾート施設と既存の宿泊施設との競合は大丈夫か」などの質問をしている。

 植村議員の質問に当時の市観光商工課は「呼び込んだ宿泊者が島を周遊することで、観光消費が増え、様々な産業に波及効果を生むことができると考える。既存の宿泊施設とは競合しない料金設定を考えているので、パートナーとして良好な関係が構築できると思っている」と答えている。

 

多額の予算は本当に有効活用か

 市が公表している中期財政計画では、今年から数年先に続き、市の財政は決して楽観視できる状況ではない。そのため、多額の予算投入に不安も浮上する。

 リゾート施設誘致と既存宿泊施設整備の予算には、市が一般財源から約3000万円を拠出する。一般財源は市が自由に使える財源だ。同計画についての取材に宿泊施設関係者は「3000万円もあるなら、老朽化に悩む市内の既存宿泊施設の整備に使える。既存施設の底上げが目的なら、さらに多くの宿泊施設に予算を振り分けることは考えられないか」と言う。

 魅力向上補助金での2500万円の予算の振り分けは既存の宿泊施設8件に決まった。補助率は50㌫であり、1件あたり最大500万円。例えば1000万円ならば、自己資金で500万円を用意せねばならない。

 現在も経営に四苦八苦する旅館や民宿が多い中、本当に補助金を必要とする既存宿泊施設が活用できるのか疑問も上がる。市民は「来年度も行うというが、自己資金がある宿泊施設しか活用できない。しかし、これら余裕ある宿泊施設は、全体と比較して設備なども充実しているように思える」と厳しい意見があった。

 また、予算には地方債3800万円がある。「地方債は市の借金。現在の財政状況を見て大丈夫なのか」との声もある。

 

最大の疑問、施設の予定地はどこか

 現在のところ、リゾート施設予定地は決まっていない。3月議会で可決された時点でも、予定地どころか候補地の公表もないままだ。市観光課は「現在は未定。公募より決定した企業に場所の選定なども任せることになっている」という。場所の特定前の予算組みと、施設地選定を企業へ丸投げする姿勢に疑問は深まる。

 市は3月議会で「地方創生推進交付金の要望であり、3月末までに事業計画が採択されれば事業推進する。4月1日付の交付申請で市の予算が計上済みであることから、今回上程している」と説明していることから、事業計画よりも予算先行ではとの疑念も残る。

 同計画は総計1億4000万円をかけ、市も一般財源や地方債から7000万円を拠出する。市中期財政計画では今年度から7年後までの財政見通しで、財政調整基金や減債基金の取り崩しで対処はするものの、財政不足が顕著に示されている。

 高額な予算は組まれたが、施設場所の特定がない計画にどのような成功イメージを持てばいいのか不安は多い。しかし、市議会3月会議で予算の可決を経て、現在は市ホームページ上で企画提案公募も始まっていることから、早急に不明点の解消と公表を待ちたい。