2022.3.08給与の1割減額を上程

「市政の混乱を招いた道義的責任を明らかにするため」と白川市長

 

 市は「市長の給与の特例に関する条例の制定について」の議案で、白川博一市長の給与を4月から2024(令和6)年3月までの期間、1割減額することを市議会3月会議で上程した。市長の任期満了までの2年間の給与を減額する案だ。2016(平成28)年の市長選で、相手候補者を支援したとして白川市長は恣意的に公共工事の指名回避を断行。長崎地裁は「裁量権の逸脱、濫用があった」との厳しい判決を受けての給与減額案だ。今議会での採決に注目が集まる。

 

 市は、市長の給与減額の理由について「2016(平成28)年5月の市発注に係る公共工事の指名回避等に対する損害賠償請求事件(民事訴訟)の判決確定に伴い、判決内容を真摯に受け止め、市政の混乱を招いた道義的責任を明らかにするため、自ら給料を減額したいので、市長の給与の特例に関する条例を制定するもの」としている。

 白川市長は市議会2月会議の10日、「判決結果を重く受け止め、自らの責任について熟慮を重ねてきた」として、「私の道義的責任について、自治体の市長として市政に混乱を招いた道義的責任を明確にするため、3月会議でしかるべき議案を提出する」と発言していた。今回上程の議案は、同義的責任を自ら示したものだ。さらに加えて「残りの任期を全うしていく覚悟だ」と、自らによる辞職の考えを否定した(4面に民事訴訟判決について報告全文を掲載)。

 市長の給与は、「壱岐市長、副市長及び教育長の給与に関する条例」で市が定めている。給与の額は同条例2条に記され、「市長、副市長及び教育長の給料は、次に掲げる額とする」として、市長月額80万円、副市長月額64万円、教育長月額57万6千円とある。これに期末手当が加わり、市長の年収は約1200万円になる。

 同条例を基にした市長の給与1割減額となれば、毎月の給与から8万円が差し引かれ、月額72万円となる。年額で見れば満額の場合は960万円、上程された議案が可決し給与の1割減額が決まれば864万円。年間給与の差額は96万円、2年間で192万円となる。

 

昨年1月にも給与減額が上程、議会は可決

 2021(令和3)年の市議会1月会議で「市長ら三役の給与3か月間1割減給」が上程され、議会は賛成多数で可決している。

 この時の減額の理由は、年末に開かれた市職員らの忘年会がきっかけで、壱岐島に広がった新型コロナ感染の行政責任としてのもの。感染拡大と医療体制のひっ迫の一因を招いた。

 さらに同時期、市長ら三役と市職員幹部による会食の事実が発覚。白川市長は「私自身が大人数での懇親会に参加しており、危機意識に欠けたことを深く反省している」と謝罪した。

 頻発する市政トップの給与減額による行政責任は、市民の不信を招いている。市民は「何かある度に給与1割減額を解決案として示すが、どこまで反省の意思があるのか」「高給取りの1割は微々たるものではないのか」など意見は厳しい。さらに、「廃業に追い込まれた建設業者の痛手や、裁判長の判決に見合う金額の行政責任なのか」など、減額の割合に対しても疑問の声があった。

 一方で「市長が今後も市政に邁進する考えであれば減給で反省の態度を示し、これからより良い市政に向かうことは必要」「市長は経済回復や雇用など、市民の暮らし向上に取り組むという。もう一度機会を与えてもいいのでは」などの意見もあった。

 議員の中には「市民に信を問うべき」「市職員には市の懲戒処分の指針があるが、市長は該当しないという。行政のトップほど厳しい処分がなされるべきではないのか」などの声がある。

 市と市民を揺るがした民事訴訟。判決が確定した今、市長自らが示した今後2年間の給与1割減額による行政責任案が同会議で審議される。どのような採決になるのか注目したい。

 

(参考)市長の給与減額に関する議案

 市長の給料の額は、令和4年4月から令和6年3月までの間に係るものに限り、市長等給与条例第2条の規定にかかわらず、同条に規定する額から当該額に100分の10を乗じて得た額を減じた額とする。ただし、市長等給与条例第3条第2項に規定する期末手当の額の算出の基礎となる給料の月額は、市長等給与条例第2条に規定する額とする。

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壱岐市長、副市長及び教育長の給与に関する条例

(第2条)市長、副市長及び教育長の給料は、次に掲げる額とする。

市 長 月額 800,000円

副市長 月額 640,000円

教育長 月額 576,000円

 議案からの算出では、100分の10減額は給与の1割となり、月8万円の減額となる。

道義的責任による毎月の給与は720,000円