2021.2.09市内新型コロナ感染拡大は予想以上の影響に。苦境の中にいる事業者

 年末年始にかけて本市で発生した新型コロナウイルス感染拡大は、この島が抱える問題や課題があぶり出される事態となった。感染者が確認された時、感染拡大防止のための市民への説明不足、トップや関係者からの直接市民へ向けたメッセージや記者会見の必要性、必要かつ市民が知るべき情報の発信のあり方、市民と行政との感情の乖離。そして、今後必要となってくることは、市が掲げるSDGsの目標の「誰一人取り残さない」を実践すべく、今回のコロナにより損失を受けた市内事業者へ、生き残るための支援策を打ち出すことだ。市によるコロナ感染拡大で、一時市民は生命を脅かされた。次は後手後手の施策で、市内経済の生命を脅かすような失態を招いてはならない。

 

 全国的に猛威を振るう新型コロナ感染拡大の第3波は、12月28日に市内で1人の感染者が確認されて以来、市民の生活や経済を揺るがす事態にまで発展した。第3波での感染確認1人目以降、同月30日には4人の感染、同月31日には9人、1月1日には4人と続き、同月8日まで連日の感染者確認となった。

 今回の新型コロナ感染拡大は、結果的に今月1日時点で感染者数56人、回復者数55人(1人入院中)、濃厚接触者などでの行政検査者数は441人。この事態により、感染者の入院を受け入れた壱岐病院では、1月5日時点で、用意された病床20に対して、一時は19人の入院者となるなど、医療現場は医療崩壊を招きかねない危機的状況にさらされた。

 本市の場合、高齢者が多く日々の通院者も多い。感染者を受け入れるため、通常診療に支障を来すことは、高齢者の生命に大きく関わることも考えられた。結果として医療崩壊は回避され、高齢者など通院者の生命に大きな影響はなかったが、その影に、医療現場の必死の支えがあった。しかし、入院者の身内や、島外からの見舞いは制限され、中には「親の死に目に会えなかった」と悔しさをにじませた市外在住の出身者もいた。

 何より今回の感染拡大で驚いたのは、12月30日の2人目から一気に広がった感染には、同月24日に市職員22人による会食が関わっていたということだった。さらにさかのぼること同月18日、市長ら三役、議員、市職員幹部が市議会定例会終了後に大人数での会食をしていたという事実もあった。市長ら三役は、市議会1月会議で「給料の1割を3か月間減給」、市職員の部長級は管理職手当の1か月分を返納するとし、今回の事態への責任とした。そして、この責任のあり方については、今も市民の中で賛否の議論が起きている。

 現在の施策は、主に飲食店や宿泊業などの経済支援に集中している。市内事業の代表者と市は先月26日に第7回市緊急経済対策会議を開き、その中でタクシーやレンタカー、土産物の販売や製造業など、間接的ではあるが観光客減少の影響を受けている業種があることが分かった。さらに、焼酎など酒類を扱う小売店は、飲食店の時短営業による注文減が売り上げに影響している。美容室などの接客業は、成人式延期による予約キャンセル、その後の客足にも影響が残る。

 行政はこの事実に目をつぶることなく、矢継ぎ早に支援策を講じねば市の経済はとても持たない。反省と責任を取ることのひとつとして、市内経済を全力で支えることだ。「誰一人取り残さない」が言葉だけではないことを実践すべきだ。