2021.10.06島外事業者の事業に意見集中

決算特別委員会を開会、認定は12月会議までの継続審査

 市は、令和2年度決算特別委員会を市議会9月会議の先月22日に開会した。今回から決算認定は決算資料の詳細な検証のため、12月会議までの継続審査となる。決算審議では、壱岐イルカパーク&リゾートの指定管理を務めるイキパークマネジメント株式会社(高田佳岳代表)の決算書の内容に集中した。その中でも同社が関わる「誘客多角化等滞在コンテンツ造成事業」「壱岐島リブートプロジェクト事業」に対しての意見が交わされた。山口欽秀議員は「同事業の委託費が決算書に記載されていない」とし、森俊介議員は「市は同社の株主であり、口を挟む権限がある」とした。音嶋正吾議員は両議員の質疑を受け、「我々は血税をいかに有効活用しているかの審議をしている。市はもっと真摯に答えるべき」と強い口調で意見した。

 

 17日に開かれた産業建設常任委員会で、市観光課は来年度以降の壱岐イルカパーク&リゾート指定管理者選定方法の考えを報告したことから、これまでの同施設の運営や決算状況を審議するため、意見が集中した。

 市観光課は「指定管理者の選定を12月議会までに行う。市が保有する25㌫の株をイキパークマネジメント株式会社に引き取ってもらい、同社を民営化し運営の自走を目指す。9月末までに公募を始める」などの方針を示している。

 同委員会は、市が提示した決算資料を12月会議まで継続審査することになる。市が提出した資料を審査するための時間が足りないこと、追加資料の要求などによる、不明確な内容の確認作業があることを理由としている。

 決算では、再生可能エネルギー導入促進のための実証研究業務委託料の2億3655万5千円、壱岐なみらい研究所によるシェアハウス運営などについて審議した。また、観光連盟など各団体の決算報告書の提出を求め、白川博一市長は「補助金を受けているすべての団体の提出は難しいが、指定してもらえれば」と答えた。委員会は「補助金を受けている団体が提出するのは義務ではないのか」と反論し、白川市長は「すべて提示するよう対応していく。まずは必要に応じた分にはなるが」と回答した。

 

「誘客多角化等滞在コンテンツ造成事業」

都市部企業の地方でのリモートワークを推進する「逆参勤交代構想」によるリモートワーク、仕事と観光を合わせたワーケーションの受け入れなどの「誘客多角化等滞在コンテンツ造成事業」について、国からの地方創生推進交付金で1496万円の予算がある。

 

「壱岐島リブートプロジェクト事業」

地方創生推進交付金事業で、イルカパーク再生整備をするため、イルカ飼育のための調餌場整備やイルカ検査機器などの備品購入に1991万円の予算。

 また、同施設の飼育管理体制の強化や体験プログラム開発、アウトドア事業などソフト面の事業に3995万円の予算。両予算とも国と市で50㌫の支出となる。

 

主な質疑

(山口議員)誘客多角化等滞在コンテンツ造成事業について。参加している業者は、有限責任監査法人デロイトトーマツ福岡事務所、イキパークマネジメント株式会社の2社とあるが疑問だ。なぜ、この事業に監査法人とイルカパーク指定管理者がいるのか。

(観光課)監査法人のトーマツは、さまざまな会社情報を持ち合わせているため。

(山口議員)このトーマツには779万9千円の事業費が支払われている。観光イベントや観光資源で集客力を高めるというが、なぜ監査法人なのか。

(観光課)市ではワーケーションを進めており、同社の情報で会社の誘客がある。この事業は昨年の6月、国の観光庁が全国を対象に始めることを決め、同年7月20日までの短期間で申請をせねばならなかった。トーマツが持つノウハウを含め、活用したいと考え決定した。

(山口議員)このように急いで決めたようだが、高額の事業だ。市は財政不足というが、本当に有効な支出だったのか。

(観光課)国が100㌫補助の事業だ。

(山口議員)国がすべてを補助するからとの理由で申請する市の姿勢に疑問だ。本市にとって何が必要なのかを考えるべき。

 さらに問う。イキパークマネジメントは何のために参加しているのか。何をしているのか。

(観光課)テレワークとワーケーションを進めるため。組み合わせのため、この事業に公募している。テレワークをしながら体験ツアーなどをしてもらい、関係人口を増やすなどの理由で、イルカパークの再生に取り組む同社がワーケーション部分を磨き上げてもらう。同社では旅行パッケージ3件なども行った。

 この事業は市が行い、同社に委託をしている。

(山口議員)市は同社に716万1千円を委託している。そして一定の利益を得ている。ならば、同社の決算書に含めるべき。どこにも記載がない。

(観光課)決算の損益計算書の売上高に含めている。4900万円の内訳の中に委託金がある。

(山口議員)委託金は売上金として計上していいのか。

(観光課)売り上げ計上で問題ない。

(山口議員)そうであれば、同社の売り上げ詳細の提出を求める。イルカパークの管理費については、提出後に改めて問う。

(観光課)後日、提出する。

(森議員)市は同社に何を発注したのか。なぜ委託なのか。

(観光課)モニターツアーの企画や運営、手配などの体験プログラム、情報発信素材の制作などの発注。委託理由は、観光庁の事業であり、イルカパークを再生の拠点とするためなど。

(森議員)予算が高額だ。

(観光課)国による審査前に見積書提出を経て申請した。

(森議員)見積もりが妥当だったとする判断は何か。

(観光課)事業によって開始時期や内容も変わる。正しい判断だ。

(森議員)市が委託した同事業で、売り上げに含まれるものは他にあるか。自主事業を含めた事業別の決算書提出を求める。連動した検証が必要だ。

(観光課)森議員からの情報公開請求があり、それを提出する。

(森議員)この議会で提出はできないのか。

(企画振興部長)市が把握しているものについては、情報公開条例に基づいて提出する。

(森議員)市としてイルカパークの経営状況が把握できているのか。できていないならば、指定管理者に資料を請求すべき。市の保有情報が足りない。

(企画振興部長)指定管理業務については提出がある。自主事業は求めていない。

(森議員)同社には市が25㌫の出資をしている。監査内容にもキャッシュフロー計算など不備があった。中原達夫氏の監査は立場的に適切だったのか。専門の人が監査すべきではないか。

(企画振興部長)税理士や監査を経ており、それで判断している。株主総会でも監査を受けており適切だ。

(音嶋議員)部長は株主総会で監査委員の議決を受けたと言う。しかし、同社は高田社長と市の2人が株主だ。市からは誰が出席し議決したのか。

(企画振興部長)6月30日に第3回株主総会を開いた。高田社長、白川市長、中原監査の3人が出席した。議事録は後日作成になる。

(音嶋議員)決算認定は継続審議だ。ただ、情報公開請求をせねば提出しないなど、コンプライアンスの問題である。

(白川市長)確かに市は25㌫出資している。しかし、その割合で株主の請求権がどれだけあるのか分からない。弁護士に確認する。

(音嶋議員)なぜ市は25㌫の出資だったのか。その立場で市は何ができるのか。

(白川市長)できる範囲のことはやる。出資比率の話は事業開始前に言ってほしかった。現実的に今は25㌫であり、その株主範囲の権限になる。

(森議員)自主事業は資料を出さないという。しかし、株主の範囲で知ることはできるはず。

(白川市長)資料も現在、市が持っている範囲の公開になる。全ての帳簿公開ができるか確認する。

(森議員)私が調べたところ、出資25㌫でも関係帳簿の閲覧の権利がある。よって、市の権利を行使して公表してもらいたい。

(白川市長)閲覧であり、ただ見るだけになる。全て書き写すことは無理なこと。

(音嶋議員)市は、イキパークマネジメントの株主であり、さらに交付金など予算を同社に任せている立場のはず。議会は決算審査のため資料提出を求めているが、それを情報公開請求せよと言う。議員は市民の代表のはず。血税をいかに有効活用しているかの審議をしている。市はもっと真摯に答えるべきだ。