2020.12.01「SDGsシンポジウム」スマート農業への取り組み話す

 農業の分野に情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)、ロボットやドローンなどを活用し、作業効率と生産性を上げるための次世代型農業として「スマート農業」が注目されている。本市は2018(平成30)年に「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」に選ばれ、最新テクノロジーを駆使した取り組みを国や県、民間企業と進めている。人口減少による担い手不足などの問題を抱える本市は、基幹産業となる農業分野のテコ入れと効率化が目下の課題となっている。

 

 現在の壱岐市の人口は約2万6000人で、このまま少子高齢化が進むと2030年には、約5000人減の2万1000人に減少すると推計される。人口減少は農業生産者の高齢化と担い手不足に直結するため、課題克服のひとつとして先進技術の導入が急がれる。その中で、実用化に向けて先陣を切ったのがアスパラガスの栽培だ。

 市は、SDGsの理解を深めるため、来場者参加型のSDGsシンポジウムとフェスティバルを21日、原の辻ガイダンスと原の辻遺跡一帯で開催。シンポジウムでは、アスパラガス栽培を主としたスマート農業確立のための基調講演やパネルディスカッションがあり、参加者らは現在の取り組みと今後の課題への認識を深めた。

 基調講演では、ヤンマーアグリジャパン株式会社の小林雅昭さんがスマート農業の可能性について、「AIなどの自動化で、農家が30年かけて得た技術が1年で可能となるかもしれない。技術の進化は人手不足の解消になり得る。未来の農業は、技術とともにいかに経営していくかに変わっていく」とし、「農作業の負のイメージも大きく変わる」と話した。

 株式会社オプティムの小林健史さんは「土壌水分センサーなどから得るデータに基づく農業を推奨している」とし、「安定した生産供給と気候変動に対応、新規就農者などの雇用を生み出すこと。次世代に向けた持続可能な農業環境を作っていかねばならない」と説明した。

 

農業技術の有識者が島の農業の課題を語る

 基調講演を行った2氏に加え、壱岐振興局農林水産部の本村高一さん、JA壱岐市農産園芸課の竹下真司さん、郷ノ浦町でアスパラガスを栽培している、このみ農園の許斐民仁さんをパネリストに招き、パネルディスカッションを開催。「SDGsとスマート農業がもたらす壱岐の未来と可能性について」をテーマに意見を交わし合った。司会進行を努めた(一社)壱岐みらい創りサイトの高下徳広さんは「高齢化による作業効率を上げていくことなどが、スマート農業の目指す姿」として各パネラーに発言を求めた。

 JA壱岐市の竹下さんは、アスパラガス栽培など本市農業の約8割に黄色蛍光灯が導入されていることから、「夏場の害虫駆除などで、農作散布の軽減になっている。これだけの割合の蛍光灯設置は全国でも珍しい。本市農業の栽培方法の特徴」と先進的な取り組みを行っていることを強調した。さらに、「アスパラガス栽培には自動散水がある。手作業での散水にはかなりの時間を要するため、自動化は労力軽減につながる」と、効率化への期待を述べた。

 このみ農園の許斐さんは「スマート農業といえば、AIなどの難しい言葉があるが、通常の作業をこなしていく中で、設置しているセンサーなどが自動で処理をしてくれる。やってみると何も難しいことはなかった」と栽培現場での実体験を語った。また、「土壌の環境などもデーター化され、自動化設置メーカーとの連携で『答えがある農業』となっていく。疑問の解決が早い」と述べた。

 オプティムの小林さんは「機械化やAI化と言えど、人がやらなければならない部分はある。その中からデータの蓄積も増える。地域性ある農業は、地域生産者の経験が必要」とし、機械と生産者のノウハウがさらなる効率化につながるとした。この考えについて、壱岐振興局の本村さんは「データ蓄積のため、島内でのICTの技術者育成も必要」とし、ヤンマーアグリジャパンの小林さんも「自動化の技術が進むと、持続ある農業のための経営的視点を学べる時間も増える」と賛同した。