2021.6.22「議会が私の暴走を止める」と白川市長

市議会6月会議一般質問で4人の議員が市の財政と財政改革を問う

 市議会6月会議の一般質問で9人の議員が登壇し、うち4人の議員が市の財政と財政改革についての質疑を行った。一般質問の11日には音嶋正吾議員が「市の財政は危機的状況だ。3月会議の予算審議前に、市長は『市は財源不足』と発言した。前代未聞だ」と市政を糾弾した。14日に清水修議員は「入湯券や敬老祝い金の削減は避けられなかったのか」と質し、一方で町田正一議員は「市長リコールの理由は財政調整基金が減るからというが、意味がわからない」とリコール活動を批判した。15日、植村圭司議員は「行財政改革で行政のスリム化をするのならば、議会のスリム化も考えるべきでなないか」と提案した。市議会の中でも議員それぞれで財政状況の捉え方に違いがあることがわかった。

 

 3月会議で市長が述べた「市の財源は不足している」に端を発し、令和3年度当初予算での事業費縮小、住民サービスの予算削減や廃止、高齢者などを対象とした行政サービスの運営見直しなどから、市民には市の財政と将来への不安が広がった。このことが理由で、4月末には市民団体による市長のリコール署名活動が展開されるなど、市民の間でも財政や市政運営のあり方について、賛否両論が巻き起こり、島が二分しかねない事態となった。

 リコール署名活動が終わった直後の市議会6月会議の一般質問では、4人の議員が市民の声を受けての質問や自らが考えている財政改革のあり方など、市政運営と財政の質疑を行なった。

 

白川市長「この議会がある限り暴走しようにも暴走できない」

 音嶋議員は「今回の市長リコール活動で市民の声を受けて思った。補助金削減など市民へ思いやりのある運営なのか。市の財政は危機的な状態である。令和3年度3月の当初予算審議前の2月17日、議会全員協議会で市長は『財源不足により前年度予算同様は厳しい』と言った。当初予算審議前のこの発言は前代未聞だ」と述べた。

 また、「SDGs関連事業など、島外業者を招き入れた事業予算は偏っており、それがあたかも市のためと市長は言う。市の財政は瀕死の状態ではないのか。市長も市政も暴走している」と質問冒頭で白川博一市長に対し、一般質問の持ち時間50分中、43分を費やして意見をぶつけた。

 音嶋議員がすべての発言を終えた後、白川市長は「残りわずか7分では執行部の答弁はできない。音嶋議員の発言には反論したいことは多々ある」として、豊坂敏文議長へ答弁可能となる20分延長を要求し、一般質問では異例となる約70分間を費やした。

 白川市長は「議員は『暴走する市行財政運営』というが、全く指摘は当たっていない。市の財政は健全だと何度も言っている。これは国が示す数値に照らし合わせて証明される。何の根拠を持って暴走というのか。私が暴走しようにも暴走できない理由は市議会の存在だ。仮に市議会へ暴走といわれる提案をしていれば、議会で許されるはずもなく間違いなく否決となる。この議会がある限り、私が暴走しようとしても暴走できない」と反論した。

 

リコールで市長が責められる理由が不明

 町田正一議員は「今回の市民が動いた市長のリコール理由が分からない。リコール署名では、『財政が厳しい。将来的に破綻する』と言って署名を集めた。財政調整基金の枯渇を理由としたが、地方財政で同基金が減るのは当たり前。コロナの危機の中、地方は基金の取り崩しで対応している」と述べた。

 さらに、「コロナ禍で島の経済が大変という時に、財政調整基金が増えていくことのほうがおかしい。そのような政策を取る市長であれば、それこそリコールの対象だ。財政調整基金が減ったから市長が市民から責められる意味がわからない。リコールをする以上、対案があるかと思えばそれもない」とリコール活動を批判した。

 また、「思い起こせば約10年前の新庁舎建設反対運動と全く同じ。この時、このまま進めば財政は厳しくなるから、市政のスリム化が必要と判断して今の分庁方式を否定した。あの時の運動と同じメンバーが主導している。反市長として幾度も行動することが市のためになるとは思えない」と持論を述べた。

 白川市長は「令和3年度予算編成で市民へ協力をお願いしたが、情報公開や説明が足りなかったことは大いに反省している」とのみ答えた。

 

補助金削減は市民の痛みではない

 清水修議員は、「市が掲げている『3年後には基金に頼らない財政再建』となるなら、将来の財政はどうなるのか」を問うた。白川市長は「必要な事業への基金は必要。しかし、財政調整基金は単に不足したからと経費に充てるものではない。同基金は本市の場合、10~20億円の間が適正とされ、その数字に近づける」と答えた。

 清水議員は「入湯券や、はり・きゅう・あんま施術、敬老祝い金の補助金削減は避けられなかったのか。高齢者のささやかな楽しみでは。これらを削減せねばならないほど財政は逼迫しているのか」と問うた。白川市長は「これら削減を市民の痛みと捉えるか、将来の財政に協力するのかが論点だ。補助金削減は決して痛みではない。これを痛みとすれば、何も財政改革はできない」と答えた。