2019.7.30「また外壁崩壊の危険」交通ビルの外壁落下、不安視する地域住民

 地域住民からの情報で、13日未明に郷ノ浦町の交通ビル最上階付近の外壁がはがれ、落下する危険があることがわかった。はがれた外壁は、天井付近に設置されていたと思われるL字型のもの。事態に不安を感じた地域住民はその後、市危機管理課に連絡し、対応を求めた。住民は「13日に山笠の準備のために商店街の通りに提灯をつけていた時に気がついた。毎年のように外壁落下の危険が起きているので、早急に対応してもらえればいいのだが」と不安を訴えた。同ビルでは、昨年も2度の外壁落下が起きている。

 

対策を求む声があるものの、未だ何もできず

 交通ビルはここ数年の急激な老朽化で、外壁落下の危険が増してきている。建築関係に詳しい人は「数年前から異常な猛暑と豪雨などが発生し、急激な環境変化で老朽化と取り付け接地面のはがれや浮きが進んでいるのではないか」と分析する。

 同ビルの崩壊危機は、市議会でも度々議論されてきた。平成29年9月会議の一般質問では、議員が「建物の一部が破損落下の危険がある。郷ノ浦の中心地であり、通学路や買い物客、観光客等も多く危険なので早急な解決を」と求めた。これに対して白川博一市長は「行政であっても個人の所有物を勝手に解体や修繕ができないので、所有者本人と協議し、解体撤去する返事をいただいているが、その後の進展はない。現在の安全対策は、所有者本人の判断と責任においてなされている」と答弁し、ビル所有者との話し合いは厳しい状況であることを述べている。

 2015(平成27)年には空き家対策の特別措置法が施行され、防災上の危機が考えられる「特定空き家」の所有者に対し、撤去や修繕を勧告することができる法案が決まった。これにより自治体による強制撤去も可能となった。

 地域住民は「外壁落下による事故が起きてからでは遅い。行政として早急な手立てを。もう10年以上も老朽化問題は続いている。なぜ何も進展がないのか」と声を荒らげる。しかし、一方で市民からは「危険はわかるが、解体のために多額の税金が使われるのはどうか。市と所有者との交渉に問題はないのか」との厳しい意見も上がる。

 今回の事案について、市危機管理課は「ビル所有者に連絡をしている。ただ、直接手を加えることができず、苦慮しているのが本音」と言う。

 

昨年は2度の外壁崩壊

不安を訴える周辺住民

 同ビルでは昨年7月3日、本市を襲った台風7号の強風で、商店街側の外壁の一部が落下した。また、同年3月にも強風によるビル正面の庇(ひさし)部分が崩れ落ちる被害が起きている。この時は風速10㍍程度の強風が落下のきっかけになった。

 これら立て続けに起きる外壁落下の危険対策として、商店街側のビル下の通路にバリケードを設け、人が立ち入らないようにしている。しかし、地域住民らは「本来ならば安心して人が往来する商店街の通りのはず。また、いつまでもバリケードがあるのは、通りの景観にも影響している」という。

 また、外壁のはがれ以外にビル屋上付近の天井の穴も問題視されている。コンクリートが崩壊し、大きく開いた屋上の穴が商店街の通りからも確認できる。豪雨時には屋上からビル内に雨水が侵入し、建物内部から急激な劣化が起きているのではないかと推測する住民もいる。

 今年も起きた外壁落下を目の当たりにして、周辺住民の不安は一層増している。市民からは「ビルの1階にある元ガレージ部分は資材置き場として板を貼るなど手を加えている。しかし2階より上は、昨年の落下以降、何も手を加えられていない」との声や、「ビルの商店街側の外壁で、安全ネットが全面に貼られていないのはなぜか(ネットは右側のみ)。左側の外壁は大丈夫との判断なのか」などがある。

 

島民には思い出深い一体型商業施設

 同ビルは1971(昭和46)年に、ボウリング場やレストラン、ホテルや宴会場が一体化した商業施設として開業した。1階は土産物売り場やバスターミナルとしても利用された。

 1975(昭和50)年には、島内開催の新日本プロレス興行で、アントニオ猪木や坂口征二などのプロレスラーが宿泊した。また、昭和から平成への変わり目の時には、大相撲の興行で曙関などの力士が宿泊している。

 夏場には島内で初のビヤガーデンをオープンし、島民の憩いや遊びの場として多くの人に利用された。

早急な対策を

 外壁パネルの浮きが数か所におよび確認できる現在の交通ビルは、商店街から目視で危険の度合いがわかる。これからの大雨や台風シーズンにどう影響するのか不安がよぎる。また、数十メートル上の天井からコンクリートが崩落した場合、現在の安全ネットで耐えられるのか疑問視する声もある。

 建物撤去の行政代執行を行うのか、ビル所有者と方針を詰めた交渉を行うのか、明確な方向性を示していかねば市民の不安は払拭できない。ビルの老朽化は刻一刻と進んでいる。地域住民の「けが人が出てからでは遅い」と言う声が現実問題として残る。