2025.3.11来月から運賃大幅値上げ

九州郵船、ORCともに燃油高騰や円安の影響避けられず

 

 九州郵船(以下、九郵)とオリエンタルエアブリッジ(以下、ORC)は先月26日、石田庁舎で開いた市航路対策協議会(篠原一生会長)で、九郵は来月1日、ORCは3月30日より運賃の値上げをすることを申し入れた。特に印通寺港~唐津港フェリー航路の11~12㍍未満のトラックは、現在の運賃から19㌫値上げする。食料品や日用品などの物資、農作物や牛など産品の出荷や農漁業にかかる資材などの仕入れを担うため、市内の販売商品の値上げにもつながりそうだ。観光客の動向にも影響が懸念される。一方で、両社とも島民割引料金はこれまで通り変更はないとしている。

 

九郵、全航路の運賃値上げ

 両社の説明では「昨今の燃油価格の高騰、整備にかかる部品なども海外からの調達のため、物価高騰と円安による価格の高騰があり、これまでの運賃では経営に影響が起きる」などを理由に挙げた。

 九州郵船は、来月1日より全航路の運賃改定を行う。主な改定として、旅客運賃はフェリーの博多~壱岐~対馬航路の博多~壱岐間230円増(7・2㌫増)、博多~厳原370円増(6・3㌫増)、壱岐~厳原間260円増(8・6㌫増)。博多~比田勝航路760円増(11・2㌫増)。印通寺~唐津航路は320円増(14・3㌫増)。全航路の値上げは平均9・5㌫になる。

 自動車航送運賃は、博多~壱岐間16・4㌫増、博多~厳原間16・3㌫増、壱岐~厳原間16・7㌫増。博多~比田勝航路16・7㌫増。印通寺~唐津航路は17・9㌫増。全航路平均16・8㌫の値上げとなる。また、自転車や125cc未満の原動機付自転車など特殊手荷物運賃も、全航路平均で13・6㌫の値上げとなる。

 同社の運賃改定は、2006年以来19年ぶり。「コロナ禍の影響は対前年度比で98㌫まで回復したが、全国の人口減少や高齢化による輸送需要はコロナ禍前の水準に戻ることは難しい。物価上昇に伴い燃油費の高騰、国の補助金の見直しなど経営は厳しく、経費削減を講じても事業の安定は図れない。確定しているジェットフォイル新船により、今後は15年にわたり年間約4億2千万円の支払いも生じる」など値上げの理由を述べた。

 

ORCも全路線の運賃を値上げ

 ORCは、30日より壱岐~長崎路線の運賃の改定を報告した。現在、片道1万800円を1万2500円、往復割引も片道9550円を1万500円、小児運賃は5600円を6250円と大幅な値上げとなる。同様にアンダー21やシニア65、障がい者割引なども対象となった。一方で、島民割引はこれまでの5千円から変更はない。

 値上げの理由は「航空機運航コストの断続的な上昇と、円安の影響による燃油費や航空機関係の海外からの部品調達コストの上昇など、路線の維持と安定的な運行確保を維持するため。特に燃油は、コロナ禍前と比較し約1・6倍の価格高騰となった」と述べた。

 本市以外の路線も値上げとなり、全体で6㌫ほど引き上げる。現在の運賃から1便あたり約5万円の運賃上昇となり、通常乗客25人の計算で一人あたり平均約2千円が値上げ幅。しかし「燃料や他運行経費などを合わせると2千円値上げでも赤字のまま。コスト削減に努めているが、厳しい状況にある」と説明した。

 

航対協は九郵へ要望書提出

「大幅な料金改定は容認できない」

 両社からの運賃の値上げの申し入れを受け、同協議会は九郵に対して「運賃・料金改定に関する要望書」を提出することを決めた。

 同協議会は、コロナ禍の影響や原油価格高騰による経営の厳しさ、今後のジェットフォイル更新や離島航路の継続の意思は理解したうえで、「本市は市民の経済的負担の軽減に取り組んでいることから、大幅な料金改定は容認できるものではない。貨物などの運送業や観光客への負担も大きく、市の経済の振興、交流人口の促進に多大な影響を及ぼす」とし、「最大限の配慮を行うこと」とした。

 今回の値上げで特に問題となるのがトラックなど物流輸送に関するもの。主に唐津港から本市へ輸送するトラックは車長11㍍から12㍍未満が多く、現状の航送運賃の片道基本料金3万5290円が、改定後には4万2350円に引き上げられ、19㌫もの値上げ率になる。

 トラック協会壱岐支部は「トラック運賃の値上げは、市民生活にも影響する。往復運賃となれば1万4千円も負担が増える。しかも、唐津航路は他航路よりも値上げ率が高い。再検討を要望したい」と意見した。