2021.5.25遺恨が残らぬ結論を望む

 あと数日後には、市長リコールを求める署名の結果が出る。現市政のあり方に疑問を感じた市民団体「壱岐の未来」は、将来の壱岐の姿を模索するために話し合いを進めた。結果的にリコールに向けた署名を集めることに決め、活動を展開した。

 リコール署名活動期間は、地方自治法で市選挙管理委員会から交付を受けて30日間と定められる。同団体のリコール活動開始は先月27日。しかし、そのわずか4日後に本市で新型コロナの感染者が確認され、一時は全島に拡大するのではないかと思われる事態に陥った。感染確認は約1週間にわたり、リコール署名活動は約6日間、署名を集める上で最も重要となる戸別訪問の自粛せざるを得ない状況となった。これにより、本来であれば30日間の署名活動期間は実質24日間と短くなった。

 市内でコロナが発生した時期、同団体の藤尾代表は市選挙管理委員会に署名活動期間延期の申し入れをしたが、通常選挙と同様に前例がないことや、法的決まりの理由から受け入れられなかった。

 同団体の署名活動に反する形でリコールの「署名しない」運動を展開する「壱岐の明日へ必死の会」が作成したチラシを全戸郵送した。代表者や団体の実態は不明だが、チラシの内容には白川市政の実績を並べ、市内組合や団体代表者や数人の議員名が並ぶ。「署名をしない」ことを声高々と訴えているが、どのような理由からなのか、何について「明日へ必死」なのか、残念ながら意図するものはチラシの文面では分からなかった。

 さらに、島内では「署名をしないように指示された」人のほか、「署名したと人に知られる」「署名をすると仕事を奪われる」など、まるで彼の国の独裁政権を連想させるやり方で扱われるとの噂も飛び交った。無論、この噂の出元や実際に圧力をかけられていたことは取材による裏取りもあり、起きるべくして起きた噂だろう。この様子を見て、「島を二分する事態が起きているのではないか」と不安を口にする人もいた。しかし、リコールは法の下での正当な行為。足の引っ張り合いと誤情報に振り回されることほど愚かなことはない。

 仮にリコール署名数が達成したとしても、その署名自体に市長の解職を決定付ける権限は一切ない。現在の市政をどう判断するかの「住民投票」が行われる権利を得るものであり、再び有権者の全市民が一票を投じて、現市政の審判をするのが目的。リコール署名達成は市長の解職達成ではない。現市政を市民がどう判断するのかが目的だ。民意を問うことは、民主主義では当然の権利であり、守られるべき行為だ。

 リコール以外には、不信任決議もある。地方自治法第178条の規定では、「議員数の3分の2以上が出席する都道府県または市町村の議会の本会議において4分の3以上の賛成により成立」とある。法で定められた住民の権利だ。正常な議会であれば、行使することも起こり得る。

 ともあれ、リコール署名の結果は数日後。その後、遺恨が残り島を二分することだけは起きないよう、互いの考えや意見を尊重して一つにしていかねばならない。