2019.2.20身体への影響は皆無なのか

 玄海原発と白血病に関する研究を進めている、元純真短期大学講師で医学博士の森永徹氏の研究資料とシンポジウムでの発表は興味深い。内容には、玄海原発30㌔圏内を有する本市にとって、聞き流すことができない重要な情報が含まれている。

 

 これまで唐津市などの原発周辺では、玄海原発の稼働差し止めを求める訴訟が起き、原告側は差し止めを求める理由の一つとして玄海町とその周辺での白血病による死亡の増加を挙げている。対して九電側は白血病の増加は高齢化によるものであると反論し、他にもその地域で昔から風土病といわれる成人T細胞白血病を原因とする意見をあげている。またこの風土病は西日本に多いことも理由にする。一方で森永氏は、成人T細胞白血病、すなわち風土病について、科学的に検討したものは一つも見当たらないとして独自に検討を進めてきた。

 

 玄海原発からの距離と白血病死亡率の変化で、佐賀県内20自治体ごとの原発稼働前(昭和44年~昭和51年)と稼働後(平成13年~平成24年)の年平均白血病死亡率(人口10万対)と、玄海原発から各自治体までの距離の関連を調べた結果、玄海原発に4・1㌔近づく毎に10万人当たり1人、白血病死亡率が増加するというものとなった。また、昭和50年の稼動前と後との比較では、4倍以上の増加率になっている。

 また放射性物質の放出になるトリチウム(放射性水素)は、体内に入ると白血病を誘発するとされる。玄海原発は全原発の中で最もトリチウムの放出量が多く、全国1位だ。

 

 トリチウムは自然界にも存在し、新陳代謝で体外排出されるといわれている。しかしタンパク質や脂肪に取り込まれた有機物結合型トリチウムは排出までに長い年月がかかる。さらに海に放出された水から、魚介類などを介して生物濃縮され、食物連鎖で私たちの体内に入るようになる。いわば内部被曝のようになる。この流れから白血病を誘発している可能性は否定できない。

 

 森永氏は、「玄海原発が全国一トリチウムの放出量が多いこと、トリチウムは原発周辺の海水、大気、水産物を汚染すること、動物実験ではトリチウムは白血病を誘発する傾向があること、同じ原発立地自治体でもトリチウム高放出と低放出原発立地自治体の住民の間には、白血病死亡率に統計学的有意差がある」ことから、玄海原発周辺の白血病の多発の要因は、玄海原発から放出されるトリチウム以外には考えられないと示唆している。本市は身体への影響の調査を、早急に要求せねばならない立地にあることを忘れてはならない。

 

 2月上旬、玄海原発周辺の自治体は防災訓練を行った。しかし内閣府によるミスで通信不通となり、本市では郷ノ浦町で訓練対応から数10分間、避難バスの遅れが起きるなどした。現実に避難する事態が発生した場合、このような状況下で安心できるのか。(大野英治)