2022.11.15議員の休暇を「推奨」する違和感

 11回目の議会改革特別委員会で育児休暇についての意見が交わされ、議員の休暇について方針が示された。

 議員の育児休暇が知れ渡ったのは2020年1月、当時、小泉進次郎環境相が第一子の誕生に合わせ、出産から3か月の間に通算2週間、育児休暇を取得することを環境省の会合の場で表明したことに始まる。

 小泉氏は「どう育休をとるか迷った。制度だけでなく、空気を変えないと取得する男性公務員も増えていかない」と取得を決めた理由を明かした。世間は育休取得に賛否分かれ、一時は議論が白熱した。

 今回、議員の育児休暇を提案したのは森俊介議員だ。現議員の中で唯一、乳幼児を持つ議員で、自身のためとともに、将来に向けた若い議員のためだということで提案した。「このままでは若い世代で議員のなり手がいない」を強調する。市議会会議規則には各休暇の条文があり、育休による休暇には「議員は、出産のため出席できないときは、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)前の日から当該出産の日後8週間を経過する日までの範囲内において、その期間を明らかにして、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる」とある。

 現状の条文では育休が取りにくいとの理由から、森議員は育休を「推奨する」の言葉を加えてはどうかと言う。さらに「議員も育休は積極的に取った方がいい。今は、抜き差しならない状況だったら休んでもいいとの条文に思える。休暇が取りやすい条文に整えるべき。国も育休を推奨している」と考えを述べた。

 案に上った育休期間は、出産から1歳を迎えるまでの約1年間。一部の議員を除き、この案に賛成を示した。反対の意見は「育休の推奨を明文化することによって、将来的に悪用する議員が現れるのではないか」というもの。結果としては条文に「推奨」を明文化する案でまとまった。

 しかし、「推奨」の文言に違和感が残る。辞書では「優れている点をあげて、人に薦めること」とある。議員の育休を推奨…?やはり違和感がないか。他自治体の条文も調べたが、推奨の文字は見当たらなかった。提案者の森議員は「推奨の言葉がベストだとは思わない。他に適切な言葉があれば」とも付け加えている。なぜ、賛成多数で採用の判断をしたのか。

 市議会は年間約100日が会議など出席義務があり、残りは基本的に自由な活動が可能だ。この労働条件に対して最大365日の休暇はあまりにも条件が良すぎる。議員は月約30万円の給与があり、1年間で最低でも360万円の給与、期末手当(ボーナス)を含めれば約430万円となる。最大、同額が休暇中でも支払われる。

 民間企業や国会議員など時代は育休取得に進んでいる。しかし、国会や大都市圏の市議など、議員数は数百人に上る。本市は16人。仮に3人の議員が育休で1年間不在が起きた場合、議会は回るのか。

 持論を言うが、議員は公職であり休暇取得を推奨するものではない。少なくとも他自治体議会や、他市の職員の休暇条文にも推奨の文字はない。市議会会議規則へ明文化前の今だからこそ、あえて言わせてもらった。現状の条文にある休暇は否定しないが、推奨明記はいかがなものか。