2022.7.05調べるほどに増える謎と疑念

安全に関しては民間も行政も同列だ

 郷ノ浦町柳田地区の民間主導の認定こども園計画は、市議会6月会議で可決した。先月21日の予算特別委員会で、白川市長は「芦辺中建設と比較する話があるが、主導が行政か民間の違いがあり、同列にすべきではない」と土砂災害特別警戒区域が隣接する共通点を問題外とした。

 確かに芦辺中建設は行政主導であり、こども園は民間主導。市長が言う言葉の意味は理解する。しかし、最も危惧せねばならないのは、土砂災害特別警戒区域が隣接している地域に、子どもが通う施設の建設が適切なのかだ。誰も我が子を危険が伴う場所に通わせたくはない。たとえ、災害対策を講じたとしても不安は残る。

 市と壱岐産業との入札指名外し訴訟で、白川市長は相手弁護士に対し「市民よりも行政が大事」という旨の言葉を発した。こども園建設にも、その考えが見え隠れしているように思える。国や県への体裁や事業者の都合よりも市民生活が大事なはず。子どもの生命を守る思考の上では、芦辺中とこども園の建設は同列のもとに考えねばならない。安全の名の下に行政も民間もない。どちらが主体の施設であっても安全を第一に考えるべきだ。

 

利益供与の疑いはないか

 しかし、約2億円以上の交付金を要する事業が、なぜ今回のような短期間審議になり、あえて土砂災害特別警戒区域に隣接する場所になったのか、謎は深まる。そのため調べを進めるうちに、理由と思えるいくつかの事案が見えてきた。この建設計画の裏にはある市議の名があがる。今はまだ確信に行き届かないため名は伏せるが、明らかに関わっている節がある。

 数人の市民の情報では、柳田地区で昨年あたりから、事業関係者とある市議が土地探しのために地域を回っていた姿が目撃されている。その事業関係者と市議は約10年前から知り合いだった事実があり、親密な関係がSNSに残されていた。さらに、建設予定地の土地所有者と市議は親戚関係にあることもわかった。建設後は、土地代としての賃料契約も発生するはずだ。これらすべてが偶然の一致なのか。利益供与の疑いはないか。

 

子ども達の安全ため、最大限の努力はしたのか

 市長は事業者の北串会理事長とは会ったことはないと言い、子ども家庭課も一度しか会っておらず、あとは電話のみの打ち合わせだという。そのようなことがあり得るのか。島外事業者が交付金により本市で事業を行う場合、真っ先に首長にあいさつに出向くのが通常ではないか。市議会での市の説明を紐解くと、段取りと口裏合わせが度を過ぎてはいないか。

 当紙は、こども園について真っ向から反対のスタンスではない。民間事業であり市の立場も理解する。へき地保育園の統廃合も検討の時期にある。ただし、それも保護者や島内関係者の理解や話し合いが前提だ。最初に考えるべきは子ども達の安全であり、島民みなが納得し喜ばれる施設にすべきなのだ。

 計画段階で市は、事業者と安全安心についての話し合い、あるいはアドバイスができたはず。そこが抜け落ちているように思えてならない。たとえ民間事業であろうが本市で運営する限り、事業者は市民の声に耳を傾けるはずだ。はたして市はその努力をしたのか。あるいは建設予定地ありきの計画のため、話題にすら上がらなかったのか。