2020.3.03良き市政にするための選挙

 市長選は、市の将来を語る上で重要な局面になる。現職の白川博一氏と新人の森俊介氏が出馬を表明しているが、昨年末までは白川氏以外の出馬はないものと思われていた。先月下旬、森氏が表明をして本格的な選挙モードに突入してきている。

 もし森氏が表明していなければ、果たして投票は行われていたのか。無投票当選の可能性もあったのではなかろうか。選挙は民主主義の根幹であり民意を示す機会でもあることから、最低限として無投票は避けたい。票を投じることがなければ民意は示せない。選挙なき当選であれば政策や公約に真剣に耳を傾けることも少なくなる。

 森氏の事務所開きであいさつをした元県議会議員の平田賢次郎氏は、このことについて大いに危機感を抱いていたようだ。「誰も出馬がいないというのは、本市の現実に対して嫌気が差しているとも考えられる。このように話す自分自身もほとほと嫌気が差している。腐れ切ってしまったと言っても過言ではない」と厳しく語った。その中で、市政を変えようと立ち上がった森氏の表明を受け「もう一度、今後の市政に向けて協力をしようと思った」とし、「選挙関係者や有権者は、今後の壱岐の発展のために尽くし、考えてもらいたい」と語った。県議を努めた立場で、壱岐の市政や県の動向などを見てきた、いわば本市の重鎮と言える人の重みのある言葉だ。

 元JA壱岐市組合長の吉野誠治氏は「先日、亡くなった元プロ野球選手であり監督だった野村克也さんの名言がある。『勝ちに不思議な勝ちがあり、負けに不思議な負けはない』。人は負けた時には反省をするが、勝った時には反省をしない。勝ち続けるとおごり高ぶる。今の国政を象徴する言葉だ。本市はどうなのか。そうなっていないか。市民の声を聞いて市政に反映することは、今後、誰が市政を預かろうが欠けてはならない」と語った。

 かつて第一線で活躍し、現在の壱岐を作り上げてきた諸先輩の声や考えを聞く機会は少ない。記者もまだ若輩者であり学ぶべき点は多い。選挙を追うことは、票を投ずる判断とともに市政のこと、現在に至る市の動向、将来に向けての考えなどを聞くことができる。そう考えれば、近々予定の白川陣営事務所開きで聞ける話も楽しみになる。(大野英治)