2019.4.23自殺率全国比1・5倍、命を救う行動に

 市は、いのち支える自殺対策計画を策定し、自殺に追い込まれることのないよう一人ひとりの命を守ろうと方針を決めた。本市における自殺者の割合が多い印象は、以前から市民の間でも言われていた。市の調べによると、平成24年から28年までに41人、年間平均で約8人も自殺により命を落としていたことになる。国や県の自殺死亡率と比較すると、実に1・5倍。本市はいかに自殺者割合が高いかを思い知らされた。そのことからも、自殺者を少しでも減らす方針を市が決めたことは、大いに賛同するものであろう。

 

 一般的には、自殺に追い込まれてしまう理由に「健康、生活、家庭、経済」などの悩みや困窮、希望をなくすことがあげられている。本市におけるここ数年間の事案(本紙掲載や過去の情報提供で検証)では、高齢者の場合は病による苦しみや経済的な理由があるようだ。40代以下の若い世代になれば、主に仕事や職場の人間関係、借金などの経済的理由が多い傾向だ。また、過去には島外者が壱岐にやってきて命を絶つ事案もあった。本市が掲げる「海とみどり、歴史を活かす癒しのしま、壱岐」であるにも拘らず皮肉なものだ。島外者の場合は思い出の地だったのかどうか理由はわからない。しかし、本市在住者の場合は、さまざまな要因による「生きにくさ」があるのかもしれない。国や県に比べ、1・5倍の数値は、案外と的を得ているのではなかろうか。

 

 精神関係者連絡会におけるアンケート調査では、壱岐病院の医療体制の整備や、自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐため、入院中及び退院後に適切な心理的ケアを必要とする意見が約7割を占める。また、死にたい気持ちを聞き、適切なカウンセリングやケアへとつなぐことや、うつ傾向がある人の精神科への相談窓口の利用しやすい環境を作ることが必要と答えている。

 行政や市民、関係機関との連携のほか、一人ひとりが助け合いや思いやりの気持ちを持ち、これまで以上に見守りと気づきを意識せねば、せっかくの良き対策計画も机上の空論のままで終わってしまう。ただ、市では各関係課をあげての社会環境整備の取り組みと計画を進めようとしている。また地域ネットワークの強化として、関係機関や団体が総合的に自殺対策を取り組むことができるネットワークを構築する計画もある。これら連携と取り組みが機能すれば、少しでも救える命が増えていくはずだ。さらに、計画案以上に必要なことが「他人事ではなく、自ら本気で取り組む意識を持つ」。これに尽きる。

 

 本市は自殺者の割合が他地域より高い傾向にあることを肝に命じ、「癒しのしま、壱岐」を掲げているのであれば、誰もが生きやすく優しい壱岐に皆でせねばならない。(大野英治)