2022.8.30目前の案に飛びつくのは愚行

 先の参院選の最中に起きた、安倍元総理の銃撃事件をきっかけとして宗教法人世界平和統一家庭連合、旧統一教会の問題が取り沙汰される。岸田新内閣発足人事においても旧統一教会との関連が問題視され、政治と宗教のつながりの根深さが表面化した。

 旧統一教会と本市の関係性では、約5年前に話題に上がった「日韓トンネル構想」がある。構想案は1981年に始まる。案の起点となるのは、東京からロンドンまでを結ぶ国際ハイウェイルートを構築する計画案で、構想とされているルートの一つが日韓トンネルだ。佐賀県から壱岐、対馬を通って韓国まで約230キロにおよぶトンネルは、朝鮮半島と日本列島を結ぶ壮大な構想と言われた。

 2017年4月16日、壱岐の島ホールで日韓トンネル推進県民会議(川口勝之議長)主催による、第2回日韓トンネル壱岐フォーラムを開催。当時の市議会から鵜瀬和博議長ら11人の議員と、商工会長、観光連盟会長らが世話人を務めた。フォーラム開催について当紙は、同年4月21日発行で「諸手を挙げて賛同できる案か?」の見出しで記事を掲載した。フォーラム開催以前から、日韓トンネル構想を懐疑的に見ていた。

 1981年、当時韓国の文鮮明総裁(統一教会創始者)によって提唱、翌82年に久保木修己氏(元統一教会会長)が国際ハイウェイ建設事業団を設立。このような経緯により、同宗教団体との関連性が問われていた。だからこそ、議員や団体代表者らの関わりに疑問を投げかける意味で、当時は「賛同できる案か」の見出しにした。

 唐津市鎮西町では調査用斜坑工事が進み、現在は全長約540㍍のトンネルが掘り進められ、対馬市は阿連での調査斜坑用地で掘削が進められた。本市は地質や地下水の問題などで、芦辺町の海岸沿いに近いルートを考えたようだ。斜坑地は芦辺町諸吉馬の瀬あたりを予定している。

 8月上旬、福岡県の民放テレビ局が本市にあるトンネルの工事現場を放送した。馬の瀬地区には工事現場事務所と思われる一棟のプレハブ小屋があり、道路からの入り口にはチェーンがかけられている。作業用トンネルを海底の下、約330メートルまで掘り進めるための工事というが、現在までに目立った動きはない。

 今後も国政、特に自民党議員をはじめとした旧統一教会との関係性は追及を増すものと思われる。2017年当時の市議会議員11人は、一切の関係性は無いと思っていいのか。慎重に内容の吟味をせず、安易に名を貸す行為だったのか。

 深く考えず目前の案にすぐに飛びつく行為は、当時も今もあまり変わらないことを改めて実感した。安易な物事の考え方は、いずれ負の遺産を残すことになる。