2020.9.02甘い自己評価ではだめだ

 本年度の「まち・ひと・しごと総合戦略」の創生会議が市役所で行われた。この総合戦略は、国と地方とで、人口減少対策や交流人口拡大など地域が抱える問題や課題を一体となって解決していこうとするもの。

 内閣府の総合サイトには「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」という4つの基本目標と、「多様な人材の活躍を推進する」「新しい時代の流れを力にする」という2つの目標を掲げ政策を進めていくことを示している。この目標に沿う形で、各自治体が独自の総合戦略を練っていく。国が積極的に進めていることから、本市が行っている各総合戦略事業にも国費が投入される。

 本市を含め、地方が抱える問題の多くは「人口減少と過疎化」「雇用」「各産業の活性化」になろう。これら課題を解決する施策となるのが総合戦略であり、言うまでもなく経済面など市民の生活に影響する重要な施策になる。そのため、創生会議で市が毎年発表する各事業の効果検証は、本来ならば緊張感のあるものとなるはずだ。

 今回、9事業の効果検証が行われた。市が事前に提示した事業の目標と実績の達成度は、「目標達成」か「ほぼ達成80㌫以上」がほとんどを占めている。市民団体から構成された委員らも、ほぼ市が提示した目標達成度に準ずる形で評価を下している。

 しかし、市が提示した目標値や実績にはいくつかの疑問が見える。この疑問は委員からの意見にも上っていた。例えば、「福岡市・九州離島広域連携事業」では、外国人延べ宿泊数目標を1300人とし、実績は2679人で評価は最高ランクのAとしたが、委員は「この数値は昨年来島した全ての外国人数であり、同事業で増えた人数のみの数ではない」と意見した。同様に、「壱岐島リブートプロジェクト」事業での観光客実数や宿泊客数も、何人が同事業からの観光客数なのかわからない。不明確なものに評価など付けられるはずがないのだが、この事業もA評価だった。

 今月末に終える「壱岐しごとサポートセンターIki-Biz」事業では、市が公表した実績数は相談件数のみで、相談数に対しての事業者の売り上げ状況が示されていない。委員からは「国と市で予算を組んでいるのであれば、成果を出すべき。相談件数だけでは評価にならない」と意見が上がった。

 他にも、事業によっては目標値が低く設定されているものもある。例えば、目標値1件に対して実績1件であれば、それだけで達成率100㌫になり、評価はAが付く。

 要するに、国の方針に沿って本市の施策にある総合戦略の効果検証は、評価が甘くなり、国に対して実績を示さねばならないための点数稼ぎに終始していないだろうか。評価検証をするために開く会議自体の必要性にさえ疑問を感じるのだが。自画自賛の場にならぬよう、市も委員も評価は評価として厳密に検証してもらいたい。(大野英治)