2020.5.19民意が反映された採択だったか

 先月30日、市議会での市長ら三役の給与減額は否決だった。採決で給与減額に賛成の議員は、久保田恒憲議員、音嶋正吾議員、市山繁議員、牧永護議員の4人で、残り11人(議長を除く)が反対に回った。また、若手などの新人議員も揃って反対の立場を示し、意見こそ言わなかったがどのような考えだったのか。反対を示す確固たる意思と信念を聞きたかった。

 議員の意見では「三役の給与を減額するくらいならば、市内の飲食店でプレミアム商品券を使うことや、各宿泊施設を利用する方向に使い、市内経済を回すべき」という。理屈としてはその通りかもしれない。しかし、今回の三役の給与減額と、商品券や宿泊利用の施策とは全く別物ではないのか。

 その理屈で言えば給与減額した場合、三役は商品券や宿泊施設は率先して使わないということにならないか。減額で三役の給与から約201万円が浮く。三役にはこの金額全てを商品券や宿泊で使えと言うのか。非現実的と思えるが。

 現在のコロナ禍の影響で、対前年同月比で5割以上の減収の店や雇用者が増え続けている。生活の見通しが立たない市民も多い。国や県、市が給付金を提示しているが、一時しのぎにしかならないかもしれない。コロナの収束が見えないからだ。今は苦しいながらも皆で協力し合う時ではないのか。

 本市が定めている三役の給与に関する条例では、市長は月額80万円、副市長は月額64万円、教育長は月額57万6千円と定めている。2年前の公表だが、期末手当を含めれば市長は年間約1259万円、副市長は年間約1007万円、教育長は年間約906万円。困窮を訴える事業者や市民から見れば羨ましい限りの報酬額だ。

 ちなみに議員報酬は月額30万円で、各委員長や議長になれば1・5万円から8万円までの役職手当が付く。期末手当も年2回あり年間報酬額は約472万円。

 本市で勤務する公務員の平均年収は、総務省発表の「2018年地方公務員各都道府県データ」によると、609万3432円となっている。公務員や三役、議員の給与は条例などで定められているため、今回のコロナ禍の最中であっても条例改定がなければ大きく変動はしない。要するに、市民生活の困窮とは全く次元の違う立場といえる。

 今回の市議会審議で、市長を含む三役の給与減額が否決され、当紙には「否決の理由を教えてくれ」と市民から多くの問い合わせがあった。なかには「三役の次は議員の報酬カットに話が及ぶことを恐れてではないのか」との憶測さえあった。これらの反応は、民意と採決の間に大きなズレが起きたからだと思えるが、どうだろうか。

 市の執行部は議案を上程する側であり採決の賛否は当然となるが、市議会は市民の代弁者であり、まずは民意ありき、その次に自らの考えを示すべきではなかろうか。コロナ禍の今、民意が望むものは理屈ではない。行政も市民も、皆同じ立場と同じ思いで乗り切っていくことを望んでいるのではないか。筋違いの理屈で判断を下したとしか思えないのだが。未だ、否決の理由が理解できない。(大野英治)