2020.3.31島内経済の逼迫を知るべき

 14日に本市内で発生した新型コロナウイルス感染は、島内経済に大きな影響を与えている。市商工会は、未曾有の事態から、支援措置に向けた市内事業者の現況を知るためアンケート調査を実施した。意見欄には、想像以上の苦境にあえいでいる実態がわかった。「このままでは廃業も考えねば」と悲鳴にも似た声や、「先のめどが見えない」「死活問題だ」など苦悩の声が上がる。

 一方で、ジェットフォイルとフェリーが4月1日から値上げに踏み切る。理由は「フェリーきずな」「ダイヤモンドいき」の新船就航でのリプレイス補助金還元の基本運賃引下率がこれまでの2割引から1割引になるため。

 値上げは、九州郵船のホームページで偶然目にした。同社担当者は「市の航路対策協議会に提出している。事前の告知はしている」という。その回答を受けて市に問うと「3月上旬に航対協を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の最中で、書面のみで確認をした」という。その概要や値上げについては、市民に告知されていない。

 値上げには、国境離島島民割引運賃は含まれず、島民カードを持っていればこれまで通りの運賃で乗船できる。市民の利用に直接の影響はない。しかし、本市は新型コロナウイルス感染発生地として全国的にも知られてしまい、観光客の動向に大きなマイナス効果を生んでいる。影響は観光業だけでなく他産業にも及ぶ。

 このような苦境の島内経済の中で、まずやるべきことは安全な島だということを広く知ってもらい、マイナス面を払拭しながら多くの観光客に島へ来てもらうことだ。交流人口が増えれば経済も活性化し、島のイメージも回復する。同時に、農海産物にまで及んだ風評被害も回復に向かうはずだ。

 無論、この時期に島外者が来ることに懸念はある。しかし、感染騒動が収束した後、気軽に訪れる地としての体勢は必要なはずだ。今回の運賃値上げは収束後の経済回復への障害になりかねない。本来ならば、「安心安全で、気軽に行ける島」を全面的にPRせねばならないはずが、運賃値上げが重くのしかかってしまう。

 この状況で不満なのは、なぜ市民へ値上げの告知をしなかったのか。可能であれば九郵との値上げ延期の交渉はできなかったのか。今回の感染発生で市民生活が逼迫していることはわかっているはずだ。運賃値上げが交流人口の動向にマイナスに影響することも知らないはずはない。市内各事業者の声が聞こえているならば、もう少し心ある対応ができるはずだ。(大野英治)