2019.2.26将来の子ども達のために調査を

 前号の玄海原発と白血病死亡率の因果関係を問う記事は、大きな反響を生んでいる。

 市民からは、人体への影響を不安視する声が多い。一方で「科学的根拠はあるのか」「恐怖を煽ってどうする」「壱岐のマイナスイメージになる」など批判的な意見もあり、原発関係者かと錯覚を起こす。玄海原発再稼働に対しては、本市は市長をはじめとする行政や市議会は揃って反対の意を示している。それは今も変わらないスタンスであるにも拘らずだ。

 

 本市は玄海原発から30㌔圏内の地域がある。しかも万が一、事故が起きた場合は離島ゆえに他の周辺自治体よりも避難が困難になる。全島民避難の明確な方法さえも見えず、現状の避難案では5日を要するとされ、その間に放射能汚染にさらされてしまう可能性は高い。言うなれば、他のどの原発周辺自治体よりもリスクは大きい。そのような地域に住む島民の声を、原発関係者側は真摯に受け止めるべきだ。

 

 本紙記事への意見の一つに、原発と白血病発症には科学的根拠がないという批判がある。しかし県が公表する資料では、玄海原発稼働前と稼働後では明らかに白血病発症数は増加している。確かに今の段階では科学的根拠を示すデータはない。しかし一方で発症数増加データをどう理解するのか。科学的根拠が見えないからこそ、因果関係があるのかを調査すべきだと本紙は伝えている。

 科学的根拠がないだけの理由で、増加を示すデータは黙殺か。とても壱岐島民の考えとは思えない。何かしらの玄海原発関係との利権か、人脈的繋がりがあるかのようにさえ思える。「マイナスイメージになる」などは、「臭いものには蓋を」の発想でしかない。都合の悪い所は隠せと言うのか。

 

 大切なことは、現在の我々だけにとどまる問題ではなく、今後壱岐を支えていく子ども達世代が健康被害にさらされないことだ。明確な調査が実施されていない今、公開されたデータや資料に目を通し、疑問や不安があれば払拭するための調査を要求せねば不透明なまま何もわからない。結果、将来的に健康被害が発覚したらどうするのか。今為すべき事を今為さねばならない。

 繰り返すが、本市は原発30㌔圏内の地域に入る。報道の使命は、この危険な地域だからこそ、県や国が公表した推移データ等を公開することであり、行政や原発関係者は市民の声を受けて、可能な限りの調査を行うことではないのか。その上で科学的根拠の有る無しを発するべきだ。(大野英治)