2020.7.08失業者を出してはならない

 コロナ禍で観光客や航路利用客の減少により、市内飲食店や土産物品店などの経済的損失は今もなお暗い影を落としている。国や県、市を挙げての支援策も矢継ぎ早に打ち出されているが、根本的な原因であるコロナ収束が解決せねば、底が抜けたバケツのようにキリがないのが現在の状況だ。

 あまごころ壱場は、5月25日の段階で閉店とする意向が決まった。理由は、売り上げが低迷し、11月の決算時には億単位の赤字となる見通しがわかったからだという。さらに、事業を続けた場合は、この先2年間は同じ状況が続いていくものと考え、閉店という苦渋の決断を下した。

 同社施設の今後と従業員の雇用先、さらには団体客や修学旅行の受け入れを担う同規模の施設が必要になるが、いったいどうなるのか。市が同社施設を賃貸か買い取りによる継続や、あるいは他施設を活用し、大型バスが駐車できる新たな団体収容可能な大型土産店を作るのか。市内事業者の誰かが後継者として手を挙げるのか、もしくは島外事業者が運営に乗り込んでくるのか。市内経済団体と行政トップとの話し合いの様子は漏れ聞こえてはこないが、何らかの手を打つことを模索していると期待したい。

 しかし、気になるのは同社従業員などの今後の雇用だ。約40人もの雇用が短期間でまとまるものなのか。中には家族を養っている人もいる。生活を支えていかねばならない責任の中で、このまま時間のみが過ぎていくことだけは避けたい。

 さらに、同時期に島内では、根も葉もない話も飛び交った。「勝本町にあるレオパレス21のコールセンターが閉所するのではないか」「約80人のスタッフが解雇されるのではないか」との噂だった。その発端は、同社が6月5日、社員約6千人の中から約1千人の希望退職者を募集していると発表したからだ。

 同社の広報に聞いたところ「事業の譲渡や撤退は不採算部門のホテルやリゾート事業などで、社の中核となるアパート事業は継続し黒字化を目指している。壱岐にあるコールセンターは、現在は継続としているので、今回の件に関しての希望退職者は募集していない」との回答だった。

 コロナ禍は、これまで積み重ねてきた思わぬ経営弱点を露呈し、影響を及ぼしている。観光や一次産業などが経済基盤である本市の場合、ここが弱点といえる。そして、末端で最も影響を受けるのが雇用者だ。(大野英治)