2022.2.08場当たり的な行政判断ではないのか

 白川博一市長と市に対して「入札指名回避」の民事訴訟の判決を受け、記者会見で白川博一市長へ「法人と個人は別か、それとも同一か」の認識について問うた。その後、企画振興部長に対して同様の質問を投げ掛けた。しかし、どちらの回答も理解しがたく、腑に落ちないものだった。

 この質問の背景を明確にするため、市の発言などの経緯を振り返る。昨年末、市議会12月会議の議案「イルカパーク指定管理者の指定」で、議会は令和4年度から3年間の指定管理者をイキパークマネジメント株式会社に継続指名することを決めた。

 しかし、この採決前に突如、議員全員協議会(全協)が開かれた。会では同社代表の税金滞納により、10月12日付けで本社所在の建物と土地が差押えとなり、債権者は壱岐市だったことを報告した。施設指定管理者指名の採決をせねばならない議会当日の事実報告に、議会は当然ながら困惑した。

 しかし、市は「差押えとなったのは同社代表であり、会社の差押えではない。登記上は同じ敷地であっても、個人と法人は別人格。法的問題はない」として影響はないとした。白川市長は「すでに議案として提出した。議員の採決に任せる」とし「法的に問題はない」と発言。要するに、「会社代表に税の滞納があっても、市は業務委託をする」と宣言したような内容だった。

 ところが、長崎地裁で入札指名外しの結審があった昨年10月5日、会社代表への信頼を失ったために会社へ入札指名回避をした行為に対して、弁護士は白川市長に「個人と法人は別物ではないのか」と問うた。白川市長は「代表者の信頼がなくなれば、会社も信頼できない」と相反する発言をしている。

 市議会の答弁も法廷の発言も、どちらも議事録などに残される公式なものになる。記者会見で記者は白川市長に対し「どういう意味なのか」と質問した。これに対し「指定管理者は法人の募集。指名回避は会社に対してではなく、代表者に対して」という意味の回答を得た。

 筆者は仕事柄、活字や文章に深く携わっており、多少なりとも国語力は持ち合わせているつもりだが、この回答はまったく意味が分からない。市長の記者会見の時間が許されれば、追加質問で追及もできたのだが、わずか15分間の会見時間と決められていたため、それも叶わなかった。

 なぜこの発言にこだわっているのか。事業者ならば理解できると思うが、行政や自治体トップの解釈によって、市の委託事業の発注などが不明確なまま振り分けられることは恐怖でしかない。どの行為が認められ、どの行為が排除されるのか、明確な線引きはあるのか。その基準も行政側の考え方一つで大きく変わる。

 このような理屈が当たり前のように通るのであれば、事業者らは不安と疑心暗鬼の中での生活を強いられることになる。極論だが、行政や自治体トップに「気に入られているか、いないか」で判断されているのではないかという疑いを持つ。筆者にも分かるような説明をしてはくれないか。