2022.8.02国と市で認識の違いが判明

 さまざまな疑問が浮かび上がる、柳田地区に建設予定の認定こども園の計画について、前回は市と県、そして今回は事業者である北串会まで足を運び、取材を行った。取材日は選抜高校野球の長崎大会で、壱岐高校が試合を行う22日。午前中の試合の応援を終え、その足で雲仙市の北串保育園に向かった。質問と回答は1面に記載の通りだ。

 同会の理事長と会い、いくつかの疑問と市の説明との整合性を検証した。市担当課は「同会理事長と市こども家庭課は、一度しか会っていない」と議会で答弁した。しかし、理事長は「10回は来島した。その時に担当課とは会っている」と答えている。小さなことかもしれないが、やはり矛盾は生じた。

 しかし、大きな矛盾点もある。認定こども園に対しての補正予算が上程されていた6月議会で、山口欽秀議員は「保育所への交付金は、公立も私立も出るのでは」との質問に対し、白川市長は「公立の保育園には補助金は下りない。民間であれば下りる」として、民間運営による保育園運営に踏み切る理由の一つにしていた。これについて後日、山口議員は「質問と答弁で、交付金と補助金の違いはあるが、公立であっても施設建物の改築や建設の交付金は出るはずだが」と自身の認識を述べた。

 この時の白川市長の答弁に違和感を感じた武原由里子議員は、独自に調べを進めた。武原議員が文科省幼児教育課に問い合わせたところ、「公立の幼稚園や保育園など、施設整備のための交付金はある。民間だけにしか下りないなどの認識は間違いだ」との回答を得ている。

 さらに同省による「認定こども園施設整備交付金交付要綱」の第2条には、「子どもを安心して育てることができる体制の整備を促進する」とし、交付金の条件を示している。要するに、「保育園の安全面に問題はない」との認識で施設整備交付金を決定する。その観点から言えば、今回市民の間で議論される柳田地区の認定こども園はどうなのか。

 確かに、土砂災害特別警戒区域に隣接した土地の建設規制はなく、事業者は敷地内の土砂災害対策は講ずるとされてはいるが、本当に全く問題はないのか。建物が建ち、その後に発生した大雨などによる被害や影響が起きてからでは遅い。地域住民の意見を聞いた上での慎重な判断が必要だったのではないか。文科省は「事業者の意向で変更はできる」という。

 さらに武原議員は厚労省の子育て支援課にも同様の問い合わせをしている。その回答も「公立の保育所などへの整備交付金はある」とのこと。このことから、武原議員は「先月の予算特別委員会での市の説明は間違いだったのでは」と首を傾げた。

 この解答が意味するものは、公共の保育園にも施設整備の交付金は下りるということ。市は「公共運営では予算は下りない」を一つの理由に今回、民間運営を判断した。ここにも矛盾が生じている。当初から市の説明には矛盾がある。何が真実なのかさえ疑って見えてしまう。