2022.7.26住民説明の不足が招く計画中止の例

 郷ノ浦町柳田地区で建設計画が進む、民間運営による認定こども園について、市民からの意見や投書が後を絶たない。

 特に先週(11日から15日の期間)にかけて、初山、沼津、渡良、柳田、志原地区の保育園保護者への説明会以降、参加者からさまざまな意見が寄せられている。現在、すべてを掲載するには編集部側の整理が必要となるため、少々時間をかけねばならない。

 市民からの情報提供で寄せられた、島外の事情についての新聞記事の抜粋内容が興味深い。内容には、行政による市民への説明が足りないことから市民の反発を買い、計画中止に至る経緯が記されている。問題点について、現在の本市の状況とも非常に類似している。

「建設ありき」「説明不足」で断念

(千葉県市川市)

 2016年、千葉県市川市では4月開園予定の私立保育園が、周辺住民の反対で取りやめられた。前年8月末に許可を受け、同年9月には開園を知らせる看板を予定地に立てたが、予定地前の道路に面した家に住む十数人の住民がその直後から反対運動を始めた。

 保育園前の道路が狭く、園児の親が車や自転車で送り迎えして通行が増えると危険だというのが主な理由だった。住民らは、署名活動を始め、市などに計画撤回の要望書も出すようになった。

 保育園を計画する社会福祉法人は、住民らに複数回にわたって説明会を開いた。駐車場を設けたり、事故防止のため送迎も限らせるなどを提案した。しかし、住民の反対は止まず、社会福祉法人でも、建設工事に入ることもできないまま、3月下旬に開園を断念することを決めた。

 住民説明会の様子について市側は「住民は白紙撤回しろとして、聞く耳を持ってもらえなかった」と言う。一方で住民側は「住民の懸念を諭すように伝えても、ふてくされたような態度をとる。教育理念の説明もなかった」「要望を伝えてもゼロ回答で『建設ありき』だと思った。十分な説明があれば納得する人も多いはず」と、市や事業者の対応が反対理由だったと話す。説明会では、市と住民の主張の食い違いが起きていた。

 関係者からは、住民への告知の遅さを指摘する声が聞かれた。地元住民が建設を知ったのは、工事計画の看板が予定地に設置された同8月下旬。看板に記された工事の着工予定日は10月1日、完成は翌年3月31日とすでに日程が差し迫っていた。

 

「結論ありきで強引」「説明が不十分、非民主的なやり方」

(東京都小金井市)

 今年1月、小金井市立保育園の廃園計画で住民の反発を招いた。小金井市は昨年、老朽化した市立保育園の廃止方針を示し、市は条例改正案とパブリックコメント募集を公開した。

 住民側は、市議有志10人と市民団体「公立保育園を市民の財産にする会」を立ち上げ、市側にパブコメの中止を求める要望書を提出した。しかしその直後、市は募集開始に踏み切り、市議と住民は「説明が不十分。非民主的なやり方は許せない」と憤った。

 住民は「コロナで保育園も保護者も対応に大変な時期にこんなものを出してくるなんて…」と首をかしげ、「市は働く保護者の気持ちを少しも分かっていない。去年の秋から始まった説明会で何度も質問をしたが、まともな回答はなかった」と唇をかむ。

 保育園父母の会の元会長は「結論ありきで強引に進めようとしている印象だ」と語った。

 

説明不足と強引な計画遂行に反発

 これら他市の状況を見て、本市で起きている認定こども園建設計画と非常に類似しているとしか思えない。当市の場合も5月30日に突然、市議会全員協議会で話が上がり、翌月の6月議会で短期審議から採決に至った。それまでに住民への説明は一切なく、マスコミへの対応もなかった。

 後日、建設予定地周辺が土砂災害特別警戒区域だったことも、当紙が記事にした以降に公表。住民(保護者)説明会もその後に開催すると発言。すべてが後手であり、住民は後回しの状況になった。

 千葉県市川市で起きた事態について、千葉大学院の都市計画学教授は「市側の説明が不十分だったことが大きく影響した。保育園設置は民間任せの許認可行政では対応が難しく、行政は事業者と手を携えて住民説明に取り組まなければならない」と話している。

 これらの事案や専門家の言葉を聞いて、市や事業者がどう考えるのか、非常に興味深い。