2023.2.22住民に寄り添う市政に戻るべき

 長崎3区選出で立憲民主党の山田勝彦衆議院議員の国政報告会が11日、壱岐の島ホールで開かれた。講演の主な内容は議員の活動報告、施策の考えや今後の方針などだが、会の後半では本市で問題となっている認定こども園に関する持論を語った。

 山田議員は「地元の課題として、地域の住民や一部の市議も真っ先に子ども達を守るために立ち上がっていることを知った。市議や市民団体の活動の熱意と情熱に心を打たれた」として、独自に問題の根幹を知るため、情報収集を国の関係各所に問い合わせていると報告した。

 そのうえで、住民から危険と言われている場所に建設を進めようとする市や県、事業者に対して「何かあってからでは遅い。大人の責任としてなんとしても止めなければいけないのではないかと思う」と自らの考えを述べた。言葉はさらに厳しく「市政における民主主義が試されている問題だ。保育園の問題よりも、安心して子育てができる壱岐の島にしていくために、市民のみなさんも立ち上がっておられる」として懸念を述べた。

 まさか、自身の国政報告会で本市の問題、市政と市民の噛み合わぬ事態が取り上げられるとは思わなかった。本来であれば、本市から選出した議員の口から語られなければならないのでは、と強く感じることでもあった。市政、県政、国政のいかなる場に立とうが、住民主体の考えのもと、耳を傾け行動を起こす議員の姿は頼もしいとともに信頼に値する。まさに「地方を大切にする政治」そのものの姿勢だ。

 しかし、なぜ同園建設はここまで混乱を招いているのか。施設の老朽化と公共施設運営の財政負担を思えば、本来ならば民間事業が建設と運営に乗り出してもらえるのは大いにありがたいはずだ。問題はただ1点。「建設予定地が子どもの育成にとってさまざまな危険が伴う」からだ。

 この1つの問題点のため、市民団体は建設見直しの署名活動を起こし、市や県の担当者には市民からの問い合わせが続く。市民の間でも「あそこは危険なのに…」の話題が起こり、同事業を採択した市議にその責任を求める。近隣住民は説明もないままの建設着手に反発…。そして、山田議員の話からわかるように、市の混乱は島外に飛び火した。この問題はいつまで続くのか。納得の上での解決はあるのか。

 あえて言わせてもらうが、ここまで混乱した事業は工事着工、完成後もおそらく尾を引くであろう。ならばいっそ、今一度スタートラインに戻り、きちんとした公募による業者選定、順序立てた住民説明会開催、事業者と住民の意向が反映された建設予定地の選定が、最もスムーズかつ最善な解決案ではないのか。

 山田議員は「保育園の問題よりも、安心して子育てができる壱岐の島に」と言う。市や県、事業者は園の建設ばかりに執着していないか。何か執着の理由があるのか。

 決まった事業の変更申請や補助金手続きよりも、保育園は「子ども達のため、子育て世代のため」のもの。執着すべきは建設計画ではなく、「市民に愛される良い園にすること」ではないか。