2020.4.21両氏わずか2㌫の差で明暗

 新型コロナウイルス感染拡大を防止する中、これまでにない異例の市長選が繰り広げられた。現職の白川博一氏は、感染防止のために職務代理を置くことをやめ、5日の告示以降も遊説などの選挙活動の一切を取りやめた。森俊介氏は、新人候補の理由から知名度も低く、市内各所での集会や人が集う街頭での遊説が唯一自らの主張の場としていたが、思うような動きを取ることができなかった。

 また、3日に行われた両氏による公開討論会も一般入場を避け、翌日1回だけの市ケーブルテレビと壱岐FMの放送で終えた。結局のところ、市民の多くは両氏の政策や指針、人となりを十分に知ることなく投票することになった。

 このような状況での選挙と、各投票所でのウイルス感染の危険性を考えた森氏は、告示前の2日に市選挙管理委員会に対して選挙延期の申し入れをした。理由に「候補者の活動量の低下、有権者の投票判断の情報不足、市職員から感染者が出たことで、投票所へ足を運ぶことをためらうのでは」などを挙げた。選管は「法的な解釈から延期はできない」と判断した。

 今だから正直に言うが、一市民である記者も今回の一票を投じるには判断材料が足りず大いに悩んだ。また、ウイルス感染の取材を進める中で、感染した市職員や他感染者の行動歴に疑問が払拭できず、投票所に足を運ぶことを躊躇した。一般の市民と比べて、市政や選挙活動をより身近で見ている記者がそう思うのであれば、多くの市民はなおさらだったのではなかろうか。

 このことは、投票率にも現れていた。期日前の投票率は、各陣営が知り合いなどに積極的に働きかけをしたことで、4年前の選挙よりも180人増だった。しかし、当日投票は極端に投票率が低下した。午後4時の段階で前回の選挙よりも11・55㌫減で、最終的には期日前と当日票を合わせても投票率67・07㌫と、12・09㌫も低い結果だ。

 開票結果は、わずかに329票差だった。投票数からの割合では無効投票を除き、白川氏50・74㌫に対して森氏48・47㌫。ほぼ2㌫しかない差だった。これは、壱岐に移住してわずか3年の森氏の健闘と、現市政に対して何らかの変化を望む市民が半数はいることがわかる。白川氏が自ら言う多選批判もあるのだろう。また、半数は森氏の考えや政策への賛同とも受け取れる。

 選挙は結果が全て。投票率の低さや僅差の結果に納得する人もいれば、不満を感じる人もいる。しかし、選ぶのは全て市民。投票に行くも行かないも市民。この結果を選挙戦を戦った両氏、市民も受け入れねばならない。(大野英治)