2018.10.16カタカナ語の連発は意味不明を生む

 文化庁は先月25日、平成29年度の「国語に関する世論調査」を公表した。この調査は実に興味深いもので、最近若者が使う言葉や公用文などの文書、訪日外国人旅行者を対象にした外国語や外来語、いわゆるカタカナ語と、これまでに使われてきたカタカナ語と同じ意味合いの漢字と、どちらを使うほうが意味が通じやすいかを国語施策の参考とするもの。

 本市だけでなく全国各地の観光地は、外国人旅行者の誘致を「インバウンド」というカタカナ語で表現している。本市の各観光施策や企画書面を見ても、ここ数年前からインバウンドの表記がいたるところで目にする。

 初めてこの言葉を聞いた市民は、はたして言葉の意味を理解しているのだろうか、との疑問も感じていた。筆者も取材の中で頻繁に耳にするところから、意味を理解してきたように思う。「インバウンド」と同じ意味の漢字表記は「訪日客」になる。どちらが馴染みやすく、意味がわかりやすいだろうか。

 近年の日本では、とかく外国語や外来語のカタカナ語を使うことがもてはやされる風潮がある。この風潮への違和感が世論調査の結果に示されている。

 今回の調査でカタカナ語と日本語のどちらを使うべきかの結果の割合は次の通りだ。示す㌫は漢字の方が理解しやすいとしたもの。また()内は同じ意味の漢字表記になる。▽インバウンド(訪日外国人旅行者)65・9㌫▽コンソーシアム(共同事業体)78・8㌫▽パブリックコメント(意見公募)58・0㌫▽フォローアップ(追跡調査)65・9㌫▽ガイドライン(指針)39・8㌫▽ワーキンググループ(作業部会)39・0㌫。

 これらのカタカナ語は一般市民が通常の会話などで使う機会は少なく、官庁が公表する資料などでよく目にする。またガイドラインなどの、これまでも長期にわたり使用されてきたカタカナ語は、定着傾向にあることが調査結果でわかる。しかし冒頭に挙げたインバウンドは、4人に1人ほどの割合しか、意味を理解していないことも見えてくる。調査結果を受けて「日本語を使うべきだ」との意見も多い。

 また、カタカナ語の意味がわからず「困ったことがある」、あるいは「たまにある」と答えた人は83・5㌫もいる。さらにカタカナ語を使うことに対する感想で「何も感じない」は49・2㌫と多いが、「好ましくない」は35・6㌫、「好ましい」は最低数値の13・7㌫。好ましくないと答えた人の中で、「わかりにくい」が62・6㌫、「日本語の本来の良さが失われる」39・4㌫。

 なんでもかんでも外来語やカタカナ語を使う風潮を見直すべき時期が来ているのかもしれない。言葉の響きはどことなく格好がいいかもしれないが、意味が伝わってこその言葉であり文書だ。

 漢字で表記する部分が減り、いたるところでカタカナ語を使う公用文。文化庁の専門家会議では、表記の見直しを議論しているようだ。繰り返すが、言葉は伝わってこそ意味を為す。(大野英治)