2020.11.24より良い市政とする通報制度

 当紙424号で、市民が市法令違反通報制度を活用し、同制度担当弁護士へ通報、受理されたという記事を掲載した。市議会9月会議で、市ケーブルテレビ施設通信機器の更新工事として、九電工長崎支店への2億7225万円の随意契約を上程した市に対するもの。理由は「高額な随意契約を行使しようとしたことへの疑念と疑惑は解決していない」とした。

 今回号では、過去に行われた新郷ノ浦港線の公共工事について取り上げた。同工事の影響により、周辺家屋の一部が傾斜したことに対する補償問題などを巡り、周辺住民と県との交渉に食い違いや解釈違いが発生。県の説明に納得できない住民は、県法令違反等通報制度で通報した。訴えを受けた県担当弁護士は、今後調査を行うとして受理している。

 それぞれ市と県の通報制度で受付窓口は違うが、基本的には「職員などが法令違反をしているおそれがある場合、職員や市民が市に対して書面を通じて担当弁護士に直接通報ができる制度」とほぼ意味合いは同じものだ。

 記事を読んだ市民の反応で、ひとつ驚いたことがある。本市に通報制度があることを知らなかった市民が予想以上に多かったことだ。この制度は2017(平成29)年8月施行と、わずか3年ほどしか経っていない。制度制定の時も、市議会や市民に向けてほとんど詳細な説明や周知はなかったように記憶する。現段階で唯一知ることができる方法は、市ホームページで「壱岐市法令違反通報制度」と検索するくらいか。

 ホームページからは、通報内容などを記載する書面もダウンロードが可能で、送り先の住所やファックス番号、弁護士事務所と担当弁護士の名もある。通報の方法としては、それほど難しいものではない。

 通報制度を知った市民は、「市の顧問弁護士に通報しても、すべて行政側に筒抜けになるのではないか」と言う。通報制度で窓口となる弁護士事務所は、市の顧問弁護士とは別であり、市や行政とは切り離された立ち位置にいる。さらに、通報人の個人情報も守られている。

 通報の対象は、「市職員などが法令に違反する行為やおそれのある事実、個人の生命や健康、財産もしくは生活環境などを害し、これらに対して重大な影響を与えるおそれがある行為」。市職員の職務遂行の公平さに対する市民の疑惑や不信を招くような行為の防止や、公務に対しての信頼を確保することを目的とした制度だ。

 この制度があるからと、何から何まで通報することが良いとは思わない。しかし、市民目線から少しでも「良い市政、正常な市政、理不尽を改善したい」と思うのであれば、通報制度は有効な手段ではなかろうか。

 通報を受ける市や職員にとっては、頭が痛い制度であろう。だが、自ら襟を正すためにも、このような制度があることを堂々と公表してもいいのではなかろうか。(大野英治)