2021.1.19この愚行の責任は誰が取るのか

 白川博一市長は先月18日、市ホームページや防災無線などで新型コロナウイルス感染拡大防止対策を呼び掛けていた。

 年末年始にかけて人の移動や、多くの人と接する機会が多くなることから、「市民皆様には感染症の拡大を抑えるために、引き続き、3密の回避、手洗い、マスクの着用など、基本的な感染防止対策を実施していただくとともに、国が示す『感染リスクが高まる5つの場面』・飲酒を伴う懇親会・大人数や長時間におよぶ飲食・マスクなしでの会話・狭い空間での共同生活 ・居場所の切り替わりによる気の緩みに留意いただき、感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫をお願いします」と発していた。

先月24日、市職員による会食で感染拡大

 しかし、今回クラスター(感染者集団)が発生した市役所では、先月24日に職員22人で宴会を開き、そこから感染が広まったと考えられる。中には宴会場となった店を責め、そこが発生源といううわさもあるが、論点がずれている。現在、コロナは誰がかかってもおかしくはない状況にある。問題は、感染拡大防止の最中に、大人数で宴会を開いた市職員と管理者らにあるのではないか。感染拡大の責任は、明らかに宴を開いた市職員だ。

先月18日、市長ら3役と議員で会食

 さらに市長が感染防止を呼びかけた同日、市議会12月会議を終えた議員(議員一人は不参加、途中退席者あり)と市長ら3役、市職員幹部らは夕刻から芦辺町の店に集まり、飲酒を伴う会食を開いていたと市民から情報が寄せられた。会食に参加した市長は、同日に感染防止を市民に呼び掛けていたのではないか。なぜその場に同席しているのか。言葉と行動が伴っていないではないか。

 市議会最終日の飲み会は、恒例としてこれまでも開催されていた。今回、コロナ禍の最中というのに、感染拡大防止の呼び掛けをした同日に会食を開いた市長や議長ら責任者は、一体どういう神経だったのか。市民には感染防止の協力を呼び掛け、自分らは別格だということか。

 市職員の仕事納めの宴会や市議会後の会食など、市政を預かる身でありながら、危機感の欠如と言わざるを得ない。今回の感染拡大は、明らかに自らの不注意と慢心が招いた人災である。

 「宴を開いた事情や都合もある」などの声もあったが、何を言っているのか。平時ならばともかく、このコロナ禍、さらに感染拡大防止を呼び掛ける立場の公人に、事情などあろうか。感染の危機より宴会を重視する事情などあるはずがない。このような擁護する声が今回のような慢心や愚行を招くのだ。

 宴会や食事会を開くことが悪いわけではない。経済効果の側面もある。しかし、今は開くべきではない時であることは言うまでもない。市職員は公僕だ。市民の模範となるべき行動をせねばならない立場のはず。なぜこのような愚かな行動をしたのか。いまだ市民に対しての市長のお詫びと説明責任さえも果たされていない。

 現在、本市は不名誉にも全国自治体でトップレベルの感染率となった。市長はこれまでも事あるごとに「全国初、離島初、全国一」を掲げ、全国に向けて市政の実績を発信していた。コロナにおいても全国トップレベルになったこの状況の見解を聞きたいものだ。

市民の経済的損失は甚大、明確な責任を問うべきだ

 さらに、成人式延期の判断もどうなのか。市内で感染者が出た先月30日、市は延期の判断を下した。成人式を迎える子を持つ市民は「なぜ、早く判断しなかったのか。子どもの成人式のために晴れ着を数十万円もかけて用意したのに」と嘆き、美容室では「予約のキャンセルで大変な状況」という。この損失は誰が責任を取るのか。

 まだ問うべきことはある。市長はなぜ、市民へ直接の説明と謝罪会見を開かないのか。日々、防災無線で感染者数を述べるだけで、市民の心に届くメッセージを発したか。行政は市民の苦境に寄り添う対応はしているのか。損害を受けた事業者や市民へ、一日でも早い経済支援対策を考え提案したか。なぜ、早急に議会招集をしないのか。宴会を開く時間があるならば、すぐにでも議会や経済対策会議を開く段取りでも進めてはどうか。

 この事態は、職員を管理すべき市政トップらも、管理能力と危機感の欠如があったと思わざるを得ない。今回の場合、一切の言い訳は通用しない。市民の健康と生命を守るべき立場の者が、市民を不安に陥れるとは言語道断だ。この愚行の責任は、いったい誰が取るというのか。まさか釈明も何もしないとは考えられないが。多くの市民の目が、今回の事態に向けられていることを認識せよ。繰り返していうが、今回のコロナ感染拡大は、明らかに愚かな行為による人災だ。市民の生命を危機に晒した責任は免れない。(大野英治)