2018.8.28「情」と「法」を曖昧にせぬよう

 少弐公園周辺の公共工事のあり方を問う意見があった。本来なら県に許可申請し進めるべき国定公園の工事が、手続き上の不備で昨年11月に無許可で進められていたことが判明。
 この工事は、昨年の夏に甚大な被害をもたらした豪雨に端を発する。公園の斜面上部から雨水が流れ込み、隣接する民家にまで達していた。この状況を把握した市では、早急な対処が必要と判断し工事に踏み切っている。市の市民目線の対応は大いに理解できる。
 しかし問題なのは、工事を進めた場所は県が管理する国定公園であったことだ。国定公園とは国立公園に準じた傑出した自然風景の地域で、自然保護法に基づき知事が申請し環境相が指定する。国立公園は国が管理するのに対し、国定公園は都道府県が管理する。
 法関連の文献によれば「区域内には風致、景観を維持するために特別地域および特別保護地区が指定され、指定地区で許可を受けずに工作物の新築、木竹の伐採、鉱物の採掘、広告物の掲出など一定の行為をすることは禁止される」とある。
 また「公園の普通地域においても、一定の行為をする場合には届け出が必要である。公園事業は主として都道府県によって執行されるが、指定の解除、区域の変更、公園計画・事業計画の決定、変更などについても中央環境審議会の意見を聞くこととなっている」とある。
 これらは、自然の景勝地を崩すことなく守り抜く理念から、より厳しい管理を求める内容となる。例え地域の自治体が明日にでも工事を進めたいと考えても、国定公園である以上は、必ず県知事への申請と許可が必要になる。これを怠れば自然公園法に抵触することになり、違法行為とみなされる。
 今回、問題として挙げられる少弐公園は国定公園だ。中には周辺地域も含まれる。冒頭に述べたように、地域住民の要望や大雨被害への対応は理解できるが、物事には正当な段取りと手続きがある。
 行政の手続きに「情」が優先されれば、何のための「法」かわからなくなり、情と法の線引きさえ曖昧になりかねない。市担当課に悪意はない。しかし景観を守る為の「法」の存在もある。(大野英治)